大相撲夏場所8日目(15日、東京・両国国技館)、大関稀勢の里(29=田子ノ浦)が幕内嘉風(34=尾車)を押し出して中日勝ち越しを決めた。2場所連続の全勝ターンは自身初。課題だった格下への取りこぼしがなくなり、初優勝と「14勝以上」が目安の綱取りへ向けて前進した。これまで期待を裏切り続けてきた和製大関は、今度こそ本当に変わったと言えるのか。

 取組後の稀勢の里は「状態はいいと思います。集中してやれている」と納得の表情を浮かべた。2場所連続で全勝ターンは初めて。これまでは中日どころか序盤の5日間で格下相手に取りこぼす“悪癖”を露呈。大関でコンスタントに10勝以上を挙げながら優勝には手が届かない主な要因になっていた。

 今までと、いったい何が違うのか。日本相撲協会の八角理事長(52=元横綱北勝海)は「落ち着いているんじゃないか」と話し、この日の審判長を務めた友綱親方(63=元関脇魁輝)も「気持ちにゆとりがあるのかな。相撲が落ち着いているように見える」と、くしくも同じ言葉を口にした。

 以前の稀勢の里は、慌てて自滅することもしばしば。今は無理に攻め急がず、じっくり構えて勝負どころを待つ余裕がうかがえる。

 取組前の姿にも「変化」が見てとれる。今までは苦手な相手や大一番を迎えると、まばたきの回数が極端に多くなり明らかに落ち着きがなくなる傾向があった。最近は控えで待つ間に、うっすらと笑みを浮かべることさえあるほどだ。審判部副部長の藤島親方(44=元大関武双山)は「初場所で琴奨菊(32=佐渡ヶ嶽)が優勝してから、変わってきた」と指摘する。

 大関としての実績や期待値ではるかに琴奨菊を上回りながら、初優勝はライバルに先を越された。これで闘志に火がついたのか、それともいい意味で開き直れたのか。もっとも、真価が問われるのは9日目以降の横綱大関戦からだろう。

 稀勢の里は「集中していく。一日一日ですね」と表情を引き締めた。20代最後の場所で悲願達成はなるか。