大相撲春場所11日目(23日、大阪府立体育会館)、横綱白鵬(31=宮城野)が大関稀勢の里(29=田子ノ浦)を一方的な相撲で寄り倒して1敗を堅守。全勝の相手を直接対決で引きずりおろして優勝争いのトップに並んだ。3場所連続で優勝を逃すなか、大一番で集中力と勝負強さを証明。一方の稀勢の里にとっては、白鵬がまだまだ「越えられない壁」であることが浮き彫りになった。
1敗で追う白鵬が全勝の稀勢の里に力の差を見せつけた。白鵬は左で張って右で強烈なカチ上げを見舞うと、左を差して一気に前へ出て寄り倒した。相手に何もさせない一方的な完勝に「いい緊張感があった。前に出られたし、満足する相撲が取れた」と自画自賛。終盤戦の残り4日間に向けて「気持ちよくいきたい」と言って、意気揚々と会場を後にした。
これで白鵬と稀勢の里は1敗同士。優勝争いという観点で見れば、両者に同等のチャンスがある。ただ、現時点で、どちらに分があるかといえば「白鵬有利」と見ざるを得ない。それほど、この日の相撲内容に実力差が表れていたからだ。
日本相撲協会の八角理事長(52=元横綱北勝海)は「(1敗の豪栄道を含めた)3人が並んで、いい展開になってきた。白鵬は集中していて立ち合いが厳しかった。稀勢の里は立ち遅れた」と話す。そのうえで「白鵬には『どうしたら勝てる』という経験の差がある」と指摘する。
優勝未経験の稀勢の里にとって、優勝35回を誇る白鵬に経験値では足元にも及ばない。この日、白鵬の相撲は立ち合いの駆け引きから最後の勝負を決める動きに至るまで、稀勢の里に全く隙を与えなかった。
さらに、この日の審判長を務めた二所ノ関親方(59=元大関若嶋津)は両者の違いについて次のように話している。「腰の高さが違う。白鵬はしっかり四股を踏んでいるから下半身がしっかりしている。太ももやお尻も大きいよね。出稽古に来ても四股を踏んで、よく汗をかいてから土俵に入っている。稀勢の里は、もう少し四股を踏んでほしい。4、5回踏んだだけで休んでいるから」
白鵬は今月11日に31歳の誕生日を迎えた。若いころに比べて稽古量こそ減ったものの、四股やテッポウなどの基本は今でも決しておろそかにしていない。
師匠の宮城野親方(58=元幕内竹葉山)も「若いころのようにガンガン稽古はできない。相撲を取らない日もあるけど、四股やテッポウだけはしっかりやっているから。今の力が急にガクッと落ちることはない。(第一線の横綱として)あと2~3年は続けられるのでは」と予測。その言葉通りなら、まだ当分の間は「最強」の座は明け渡しそうにない。
一方の稀勢の里は、残りの4日間に向け「思い切っていくだけ。まだこれから。自分を信じて最後までいく」と前を向いたが…。まだ優勝の可能性は残すとはいえ、両者の力量差が浮き彫りになった格好。立ちはだかる壁を突き破り、果たして、初の賜杯にたどりつけるのか――。
白鵬に完敗 稀勢の里の“隠れた敗因”
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