大相撲春場所8日目(20日、大阪府立体育会館)、大関豪栄道(29=境川)が幕内栃ノ心(28=春日野)をはたき込みで下して1敗をキープ。カド番脱出に王手をかけ、優勝争いにも踏みとどまった。大関昇進後はすべて10勝未満と低空飛行が続く「ナニワの大関」に大阪の維持員からなる「東西会」の重鎮で横綱審議委員も務める岡本昭氏(岡安商事最高顧問)が猛烈なゲキを飛ばした。

 カド番大関が1敗を守った。立ち合いで左へ変わってからのはたき込みに「(相手が)いつもより低かったんで。とっさに? そうですね。(3連敗中の相手に)何回も何回も負けられない」。相手の動きを冷静に見極めて勝負に徹した。

 1月の初場所は4勝11敗と大敗。3度目のカド番で迎える今場所は内容よりも結果が求められる厳しい立場にいる。

 今場所前に豪栄道と顔を合わせて激励の言葉をかけたという岡本氏は「崖っ縁だから、何が何でも頑張らないとあかん。大関になって、てんぐになってるんちゃうか。10勝したことが一回もないんやから。先場所なんか4勝しかしとらん。今場所は命を懸けてやらなあかん。最低でも(終盤戦まで)優勝争いや」とハッパをかける。

 大関昇進後にたびたびケガに泣かされてきたことについても「横綱もみんなケガをしているなかで相撲を取っている。そんなん、言い訳にしたらあかん」とピシャリ。同情的な見方はしなかった。さらに「いくら地元だからって、遊びに行って羽を伸ばしているヒマなんかない」と“夜遊び禁止令”も出した。

 もちろん厳しい言葉が並ぶのも、大関が本来の力を出し切れていないもどかしさの裏返し。地元出身力士の活躍を願ってのことだ。
 初場所では琴奨菊(32=佐渡ヶ嶽)が日本出身力士として10年ぶりに優勝を果たし、今場所は稀勢の里(29=田子ノ浦)が唯一の全勝でV争いの先頭を走っている。同じ和製大関で、しかもご当所力士としても、これ以上は地元ファンの期待を裏切り続けるわけにはいかない。

 豪栄道は「とりあえず、また明日です。(9日目の鶴竜戦は)普通に、気負わずに。トップと1差? あまり気にしない」。連日の大声援を背に受けて、ここから意地を見せられるか。