大相撲春場所3日目(15日、大阪府立体育会館)、幕内琴勇輝(24=佐渡ヶ嶽)が横綱日馬富士(31=伊勢ヶ浜)を押し出して初金星を獲得した。勝ち名乗りを受けて懸賞を受け取ると、感極まって男泣き。取組後も「すごくうれしかった。まだフワフワしている。勝ったのが信じられない」と夢心地に浸った。

 佐渡ヶ嶽部屋では大関琴奨菊(32)に続く新鋭として大きな期待を背負ってきが、2013年九州場所で左ヒザを負傷。手術を受ける際に医師から「もう相撲を取るのは無理」と言われたほどの重傷だった。2か月間の入院生活を経て、14年春場所で奇跡の復活を果たした。今や仕切りの最後に「ホウッ!」と叫び気合を入れる姿はファンにもおなじみの光景だ。

 横綱白鵬(31=宮城野)に「ほえるな」と“物言い”をつけられたこともあったが「変える必要はない」と突っぱねる芯の強さもある。この日の金星で見せたように、突き押しでガムシャラに前に出る速攻相撲は破壊力十分。兄弟子の琴奨菊に「自分が他の部屋の力士だったら、勇輝は絶対に当たりたくないタイプ」と言わしめたほどだ。

 横綱に土をつけた琴勇輝は「部屋は一つのチーム。少しでも大関の役に立てれば」。綱取りを目指す琴奨菊にとって、頼もしい“アシスト”となった。