大相撲初場所初日(10日、東京・両国国技館)、大関稀勢の里(29=田子ノ浦)が幕内安美錦(37=伊勢ヶ浜)に押し倒されて完敗を喫した。今場所は日本出身力士による10年ぶりの優勝に期待が高まるなか、筆頭候補としても名前が挙がっていた。それがフタをあけてみれば、横綱大関陣で唯一の黒星発進。取組を視察した横綱審議委員会からも「優勝は無理」と厳しい目を向けられた。

 稀勢の里の初優勝に“黄信号”が点灯した。取り直しとなった安美錦との一番。相手の立ち合いの変化に全くついていけずに体を泳がされると、土俵際で何もできずに一方的に押し倒された。日本出身力士による優勝への期待感が高まっていたが、その筆頭候補が出足から大きく出遅れた。


 この日は横審のメンバーが国技館を訪れて取組を視察した。かねて国産力士の優勝を熱望している守屋秀繁委員長(千葉大名誉教授)は「今場所は前評判でも稀勢の里に優勝の可能性があると言われていた。始まってみたら“いつものような”稀勢の里だった」とあきれ顔を浮かべるばかり。稀勢の里が優勝する可能性についても「(今後も含めて)無理だと思う」とキッパリ言い切った。


 何よりも横審委員に対する印象を悪くしているのは、稀勢の里の「負け方」にある。守屋委員長は「取り直しの一番で安美錦が飛ぶことは事前に予想できたのではないか。私だけではなく、横審の他の先生方も『飛ぶんじゃないか』という話をしていたんです。その通りになった」と指摘する。横審各委員の目から見ても明白だった安美錦の変化が、稀勢の里の頭の中に全くなかったとしたら…。いつまでたっても、悲願の賜杯には手が届きそうにない。


 前日9日には「準備はできた。あとは結果を残すだけ」と自信に満ちた表情を浮かべていたが、この日の取組後は一転。何を問われても「…」と無言を貫いた。初日から大きな期待を裏切る結果となってしまったが、ここから逆転優勝の“奇跡”を起こすことができるか。