大相撲九州場所9日目(16日、福岡国際センター)、大関照ノ富士(23=伊勢ヶ浜)が大関稀勢の里(29=田子ノ浦)に一方的に寄り切られて完敗。4勝5敗と黒星が先行し、勝ち越しすら危うくなった。すでに綱取りの可能性が消滅しているなか、あくまで照ノ富士は千秋楽まで取り切る構えだが、角界内では横綱昇進は時間の問題とさえ見られていた大器の「将来」が危惧されている。

 取組後の照ノ富士は「昨日の相撲で変化をしたから、今日は思い切りいこうと思った。久しぶりに悔しさを感じている」。思うように動けないことへの、もどかしさをにじませた。稀勢の里とは秋場所13日目に対戦し、右ヒザを負傷。前十字靱帯損傷の大ケガだったにもかかわらず、千秋楽まで強行出場した。最終的には優勝同点の結果を残したものの、今も完治には程遠い状態が続く。

 この日も稀勢の里の寄りを残せずあっさりと土俵を割るなど、かつての力強く豪快な相撲は鳴りを潜めたまま。それでも、照ノ富士の頭の中には「休場」の2文字はない。この日の取組後も「負け越してもいいんで、思い切りやりたい」とキッパリ。師匠の伊勢ヶ浜親方(55=元横綱旭富士)は「最後まで出場? もちろん」と言い切った。

 一方で、親方衆の間では今でも強行出場に疑問を投げかける声は強い。現役時代にヒザの故障に苦しんだ鳴戸親方(32=元大関琴欧洲)は「あの状態で出続けているのが不思議。大関になったばかりで休みたくない気持ちもあるのかもしれないけど…。将来のことを考えたら、今は休んでおいたほうがいい」と休場を“勧告”する。陸奥親方(56=元大関霧島)も「あれだけの体を支えているわけだから、ヒザにかかる負担は大きい。(右ヒザを)かばって逆側をケガすることもある。そうなったら取り返しがつかない」と警告した。

 横綱白鵬(30=宮城野)をはじめ、現在の3横綱は30代に突入。日本人の3大関も、全員が30歳前後と「ベテラン」の年齢に達しつつある。まだ20代前半と若い照ノ富士は、角界の次の世代を担うべき存在でもある。ヒザの故障が慢性化して、このまま“並の大関”となってしまえば、角界全体にとっても損失は計り知れない。親方衆が心配するのも、大器の将来を思ってのことだが…。果たして照ノ富士は無事に場所を乗り切れるのか。これ以上、悪化しないことを祈るばかりだ。