大相撲九州場所(11月8日初日、福岡国際センター)を前に、毎年恒例の「横綱会」が今年は中止になる事態となった。年に一度、歴代の横綱がズラリと顔を揃える“角界のサミット”は、なぜ見送られることになったのか。その理由として、一部では日本相撲協会の北の湖理事長(62=元横綱)の体調不安説がささやかれている。

 一年を締めくくる九州場所前の恒例行事になっていた「横綱会」。その名の通り元横綱の親方や現役横綱が一堂に会する親睦会で、これまで福岡の一流ホテルや高級料亭などで開かれてきた。角界でも横綱になった者しか参加を許されない特別な会合は「番付社会」の象徴でもある。かつて若貴兄弟や曙が出席した際にはワイドショーが取材に訪れたほどだが、基本的には元横綱の親方衆が現役横綱を激励するという荘厳な会合だ。

 昨年は初めて出席した横綱鶴竜(30=井筒)が会合の冒頭で「初めてですが、よろしくお願いします」とあいさつ。現役の鶴竜に限らず、横綱経験者にとっては大相撲の頂点に立った事実を改めて実感する場にもなっていた。そんな“角界のサミット”と呼べる会合が、なぜ今年は取りやめになったのか。これまで横綱会が中止となったのは鳴戸親方(当時、元横綱隆の里)が急逝した2011年など、ごくわずかしかない。それだけに、今回は異例の事態といっていい。

 事情に詳しい関係者は「北の湖理事長の体調も考慮して中止になったそうだ」と明かした。かねて角界では理事長の体調面をめぐり、不安がささやかれてきた。7月の名古屋場所は「両側水腎症」で休場。都内の病院で手術を受けた。9月の秋場所は左目の充血で協会あいさつなどの主要な職務を八角事業部長(52=元横綱北勝海)が代行した。

 27日には福岡市内で相撲協会と維持員の交流会が開かれたが、やはり理事長は姿を見せずじまい…。今年は初場所から客足も好調で、相撲人気は完全復活。日本出身力士の優勝こそないが、遠藤(25=追手風)や逸ノ城(22=湊)ら若手力士が土俵を盛り上げ、照ノ富士(23=伊勢ヶ浜)の大関昇進や鶴竜の横綱初優勝など明るい話題も多かった。一方で横綱白鵬(30=宮城野)の審判部批判や秋場所前に発覚した元熊ヶ谷親方の暴行事件など、北の湖理事長にとっては心労も絶えない1年だった。

 協会トップの体調は本当に大丈夫なのか。今後の動向に注目が集まりそうだ。