大相撲秋場所5日目(17日、東京・両国国技館)、大関稀勢の里(29=田子ノ浦)が関脇栃煌山(28=春日野)に敗れ、早くも序盤戦で土がついた。今場所は“最後の優勝チャンス”とも指摘されるなか、あまりに痛い黒星。ここで優勝できなくて、いつするのか?

 相手にもろ差しを許して懐に飛び込まれると、一方的に寄り切られて完敗。取組後は報道陣の問いかけにも「……」と無言を貫いた。初日から4連勝も、腰高になる課題は相変わらず。この日も弱点を突かれて何もできなかった。

 今場所の稀勢の里には、悲願の初優勝を果たすための諸条件が揃っていた。本場所で5連敗中と歯が立たない横綱日馬富士(31=伊勢ヶ浜)が右ヒジのケガで休場中。同じく最近6場所で1勝5敗と分が悪い横綱白鵬(30=宮城野)も左ヒザの炎症で3日目から休場となった。稀勢の里が大関となってから、白鵬がいない場所はもちろん初めてのことだ。

 稀勢の里の過去1年間の平均勝ち星は10~11勝。苦手の2横綱が不在となり「2勝分」を上積みできれば、それだけで優勝ラインの「12~13勝」に手が届く計算だ。これまでにない千載一遇のチャンス。角界内からも「今場所で優勝するしかない。ここでダメなら、この先もない」(中堅の親方)と断言する声も上がっていたほどだ。

 ところが、フタを開ければまたしても序盤戦での取りこぼし…。周囲の期待感が大きくしぼんだことは言うまでもない。 ライバルの大関照ノ富士(23=伊勢ヶ浜)は、この日も危なげない相撲で5連勝。日本相撲協会の北の湖理事長(62=元横綱)は「照ノ富士は(終盤の)横綱大関戦まで星を落としそうにない。相撲に勢いがある」。和製大関は1敗のまま食い下がれるか。