大相撲名古屋場所千秋楽(24日、愛知県体育館)、初優勝を果たした幕内逸ノ城(29=湊)は苦しいケガを乗り越えてきた。

 身長192センチ、体重212キロで〝モンゴルの怪物〟の異名を持ち、相手を圧倒するパワーが魅力。だが、3年前の秋に腰痛に悩まされ、ヘルニアの診断を受けた。

 最も症状が重い時は「歩くどころじゃなくて横になれないし、横になったら立つこともできない。本当にひどかった」と日常生活に大きな影響を及ぼした。当時は復帰を想像することができず「もしかしたら相撲取ることができないんじゃないか、土俵に上がることができないんじゃないか」と感じていたという。

 それでも治療やリハビリに耐えてカムバック。これまで優勝争いに加わりながらも手が届かなかった賜杯を抱いて「ここまで来れたのが夢のような感じです」と素直に喜んだ。

 一方、初Vに至ったのは多くのサポートのおかげだと実感している。「部屋の若い衆や親方、おかみさん、後援会の人たち、みなさんの支えで。自分ひとりじゃないので。みなさんに感謝の気持ちでいっぱいです」。

 故郷・モンゴルの両親も「めっちゃ喜んでいると思います」。最近は「目の前のことで頭がいっぱい」で連絡できていなようだが「報告するのが楽しみです」と笑顔を見せた。

 不安が完全に消えたわけではないが、今場所の活躍は大きな自信となった。来場所は三役返り咲きが濃厚で、大関挑戦の道も見えてくる。逸ノ城は「どの地位でも今回のことをきっかけにしてやっていきたい。しっかり目の前の一番に集中していきたいです」と力強く語った。