大相撲名古屋場所千秋楽(26日、愛知県体育館)、横綱白鵬(30=宮城野)が横綱鶴竜(29=井筒)を寄り切って2場所ぶり35回目の優勝を決めた。表彰式のインタビューでは「(場所の)前半、力が落ちたと言う人がいた」と発言。NHKの大相撲中継で自身の衰えを指摘した舞の海秀平氏(47=相撲解説者)に“公開反論”した。さらには角界でも異論が出ており「舞の海発言」の波紋が広がっている。

 白鵬の異例の発言が飛び出したのは、表彰式のインタビューでのこと。「この15日間はどんな場所でしたか?」の質問に「前半、誰とは言わないですけど『力が落ちてるんじゃないか』と言う人がいましたので。ここで優勝したんでね。寂しいことは言わず、温かく応援してもらいたいと思います」と切り出したのだ。

 白鵬は名指しこそ避けたものの、それが舞の海氏であることは明らか。場所の序盤戦のNHK中継で「白鵬は力が落ちている」と語ったからだ。この日の中継では横綱の発言の直後に、舞の海氏が苦笑いを浮かべるシーンも映し出された。あくまで白鵬はやんわりと“反論”してみせた格好だが、実際にはかなり腹に据えかねていたフシがある。

 春場所では新大関照ノ富士(23=伊勢ヶ浜)に力負け。夏場所では賜杯までさらわれた。白鵬は周囲に漂う「世代交代」のムードを敏感に察知。今場所前には「6場所連続で優勝していて、1回優勝できなくてどうこう言われたら、他の力士はどうなるの」と大横綱のプライドをにじませたこともあった。ただでさえピリピリしているところに、舞の海氏の発言…。結果的に白鵬の闘志に火がついた格好だ。

 さらに、舞の海氏の発言をめぐっては角界でも次々と“異論”が続出。審判部副部長の藤島親方(43=元大関武双山)は「舞の海さんが力が落ちたと言っていたけど、僕はそうは思えない。これだけの相撲が取れるんだから。圧力で言えば若い時のほうがあったかもしれないが、トータルで見れば円熟味を増してきた。まだまだ強い横綱でいるのでは」。

 白鵬の師匠の宮城野親方(57=元幕内竹葉山)も「急に力がガタッと落ちたということはない」とキッパリ。懸念されていたモチベーションの低下についても「まだ達成していない記録とか自分なりに目標をつくってやっている。気持ちの部分でも心配していない」と言い切った。白鵬は次なる目標として歴代最多の通算1047勝(現在934勝)などを公言。記録に対して貪欲な姿勢がある限り、メンタル面も心配無用というわけだ。

 舞の海氏も中継で「謝らないといけないですかね。予想が外れて良かった。私も勉強になりました」とバツが悪そうに語ったが…。いずれにせよ、白鵬は自らの優勝で改めて「最強」であることを証明。盟主の地位は、まだしばらくは続きそうだ。