大相撲名古屋場所9日目(20日、愛知県体育館)、大関稀勢の里(29=田子ノ浦)が新大関照ノ富士(23=伊勢ヶ浜)に押し倒され完敗。取組後は報道陣の質問にも無言を貫き、悔しさをにじませた。3敗に後退し、優勝争いからも完全に脱落。結果的に中盤戦までに格下に喫した2敗が“致命傷”となった格好だ。

 とはいえ、格下への取りこぼしは今に始まったことではない。一向に改善の兆しが見られない“悪癖”に、周囲の期待も次第に薄れつつある。審判部長の伊勢ヶ浜親方(55=元横綱旭富士)は、今場所の稀勢の里について「いつも通り。それしか言いようがない」。

 同親方は今場所前の出稽古で和製大関に対して熱心に指導。これまでも一門の枠を超えて目をかけてきただけに、全く変化が見えない稀勢の里の姿には心中複雑だろう。

 日本相撲協会の北の湖理事長(62=元横綱)も場所前に「稀勢の里はフタを開けてみないと分からない。逆(期待されない立場)のほうが発奮していいんじゃないか」。優勝争いの予想で横綱白鵬(30=宮城野)や照ノ富士の名前を挙げる一方で、和製大関への期待感を口にすることはなかった。照ノ富士の出現で、ますます影が薄くなってしまった感は否めない。

 今月3日には29歳の誕生日を迎えた。「(取りこぼす課題は)常に思ってやってますよ。一番の重みを感じている。前半に余計な星を落とさないようにしたい」と話していたが…。厳しい現状が改めて浮き彫りになった。