重苦しい空気を断ち切った。大相撲夏場所14日目(21日、東京・両国国技館)、幕内隆の勝(27=常盤山)は幕内霧馬山(26=陸奥)を突き落として3敗(11勝)を守った。

 立ち合いで力強く当たると、左を差して右上手をつかむ。わずかな膠着(こうちゃく)状態から霧馬山が外掛けを狙ったが、これをかわして突き落とした。

 相手の足技に焦らず反応し、取組後は「とっさに体が動いたのでよかったと思います」と安堵の表情。対戦成績が過去10勝1敗とはいえ「状況が状況なので。うまくいくとは思わなかったけど勝ててよかった」と率直な感想を口にした。

 ついつい優勝の2文字を意識してしまった。V争い単独トップで迎えた前日、関脇若隆景(荒汐)に屈して3敗目。表情や動きに硬さが目立ち、いつもとは違う緊張感に襲われていた。

 それでも、帰宅途中から取組の映像を見直し「ここがダメ、ここがダメと思って修正した」。また、周囲からは「自分の相撲取れたらいいんじゃない? 楽しんできなよ」などと声を掛けられ、平常心を取り戻すことができたという。「昨日負けて吹っ切れたというか楽になった」と隆の勝。同じ過ちは繰り返さなかった。

 この日、幕内佐田の海(境川)が敗れ、3敗は隆の勝と横綱照ノ富士(伊勢ヶ浜)の2人に絞られた。千秋楽は隆の勝が佐田の海、照ノ富士が御嶽海とそれぞれ対戦。本割で両者が勝てば決定戦で決着をつけることになる。

 8日目に横綱を破った隆の勝は「ここまで来たら(優勝を)取りにいく。2番取ることも頭に入れて? そのつもりで頑張ります」と気合十分。初の賜杯が手の届くところまで近づいてきた。