〝赤門力士〟の素顔とは――。大相撲夏場所3日目(10日、東京・両国国技館)、角界初の東大出身力士となった須山(24=木瀬)が前相撲で初土俵を踏み、山田海(16=出羽海)を寄り倒して快勝。史上5人目の国立大出身力士が白星デビューを飾った。3度目の挑戦で東大合格を果たし、入学後に相撲を始めた異色の経歴の持ち主。高校時代の恩師が東大入学前の〝秘話〟を明かした。

 角界に新たな歴史が刻まれた。前相撲で初土俵を踏んだ須山は右四つで一気に攻め込み、山田海を圧倒。「いつもと同じ気持ちでいった。しっかり前に出ようと思いました」と注目の力士デビューを振り返った。

 24歳の新人は異色の経歴の持ち主だ。市立浦和高から1年浪人して慶大に進学。しかし、東大への思いをあきらめきれず、3度目の受検で合格を果たした。入学当初は外務省の官僚や商社マンになる将来を思い描いていたが、相撲部を見学して興味を持ち競技に熱中。「もっと強くなりたい」と角界挑戦を決めた。現在は文学部哲学科4年生。当面は〝二足のわらじ〟を履きながら来年春の卒業を目指している。

 市立浦和高2、3年時に担任を務めた真藤純行氏(58)は「非常に精悍(せいかん)な顔つきというか、いちずで真っすぐな目をしていますよね」と教え子が挑戦する姿に目を細める。高校時代の性格は「自分なりに、どう納得するか。納得したら頑張るんですが、そういうものを見つけられないと迷いが感じられました」と証言。学校生活では体育祭や球技大会、文化祭などに積極的に参加し、友人に囲まれながら過ごしていたという。

 学業でも手を抜かず、1年のころから東大を意識。しかし、2年に入ると目標に迷いが生じるようになる。真藤氏が明かす。「やっぱりどうしようかな、どの方向に進むべきか…となって。そのときに学年主任の先生から『そこ(東大)に行って、そこの人たちと一緒にやっていけば一番の何かが見つかるだろうから』と励ましを受けたんです。それからはブレなくなりましたね」

 ひとたび決意が固まれば、とことん突き進むのが〝須山流〟。真藤氏は「これと決めたら意志が強く粘り腰。よく頑張ったと思います。そして自分の力を試せる素晴らしい競技に出合い、次のチャレンジ(大相撲)も見つけたようなので、また頑張ってほしいですね」と教え子にエールを送った。

 その須山は「東大なので東大関を目指す」と新たな挑戦に意欲十分。持ち前の〝粘り腰〟を武器に、番付の階段を一歩ずつ上っていくつもりだ。