【取材の裏側 現場ノート】大相撲の宮城野部屋が東京・墨田区八広から同区東駒形の旧東関部屋へ移転することになった。現在の建物が所属力士の増加で手狭になったためだという。部屋関係者によれば、5月の夏場所後に本格的な引っ越し作業を開始。7月の名古屋場所から帰京後に移転を完了させる計画だ。

 ひと口に「相撲部屋」と言っても、土俵さえあれば済む話ではない。稽古場の他に、ちゃんこ場、若い衆が生活する大部屋、関取の個室、師匠の住居…。都内で土地を取得して新築するとなれば、少なくとも数億円単位の資金が必要となる。既存の建物を改築する場合は新築に比べて費用を抑えられる半面、構造上の制約があることも多い。現在の宮城野部屋は入居前まで店舗だった物件を改築。稽古場が2階まで吹き抜けになっている珍しい造りで、むしろ開放感があって新鮮だった。

 最も手っ取り早いのは相撲部屋として使用されていた建物をそっくり利用する、いわゆる「居抜き物件」だ。最近では昨年、二子山部屋が埼玉・所沢市から葛飾区柴又にある旧東関部屋(前出とは別物件)へ移転。立浪部屋は茨城・つくばみらい市から台東区橋場の旧千賀ノ浦部屋へ移った。今度の宮城野部屋の引っ越しも、このケースに該当。ただし、正式な拠点ができるまでの仮住まいとなる。

 現師匠の宮城野親方(元幕内竹葉山)は8月に65歳の定年を迎える。後継者にあたる間垣親方(元横綱白鵬)の希望は都内の新築物件。いくつかの候補地が挙がっているが、最終決定には至っていないようだ。現役時代は見学者のために「稽古場をガラス張りにしたい」と構想を披露したこともある。最終的にどんな〝城〟を構えるのか、今から楽しみだ。

(大相撲担当・小原太郎)