ハンディをはねのけてつかんだ栄光だ。大相撲春場所で初優勝を飾った関脇若隆景(27=荒汐)が自身のスタイルのルーツを語った。

 一夜明けた28日にオンライン会見を行い「実感は少しずつ。自分でもびっくりした。今場所は自分の相撲を取り切ることができたんでそこがよかったと思う」と喜びを口にした。

 千秋楽の本割は、2敗で並んでいた幕内高安(田子ノ浦)の敗戦を見届けて土俵に上がるも、自身も負けて優勝決定戦に臨んだ。雌雄を決する一番で「(本割後に)支度部屋へ戻るころには切り替えて頑張ろうという気持ちだった。まずは気持ちを落ち着かせて自分の相撲を取り切ろうと自分に言い聞かせた」と集中力を研ぎ澄ませていたことを明かした。

 その自分の相撲とは、場所中にも再三にわたり口にしてきた身上の「下から攻める」相撲。若隆景は身長181センチ、体重130キロと力士としては〝軽量級〟。少年時代から長男の幕下若隆元、次男の幕内若元春と3兄弟で切磋琢磨してきたが、その兄弟と比べて体格的に恵まれた方ではなかった。若隆景は「そういう時から下から上に相手を押し上げて、という相撲を取るように言われていた。下から食いつく相撲で少しずつ勝てるようになってきたことで、それが自分に合っていると実感してきた。大相撲に入ってからその気持ちがどんどん強くなった」とハンディをはねのけ幕内優勝を果たすまでになった。

 新三役で12勝(3敗)を挙げたことで、大関取りの目安である「三役で3場所合計33勝」の基盤をつくった。日本相撲協会の伊勢ヶ浜審判部長(元横綱旭富士)は「土台を築きつつある。来場所も同じように勝っていければいい」と言及する中、本人は「もちろん目指すものではあるが来場所が大事。先場所まで立ち合いで押し込まれて持っていかれていたが、今場所はなかった。ただ今場所だけよくてもダメ。続けられるようにしっかり稽古したい」と気を引き締めていた。