怪物旋風を吹き飛ばした。大相撲夏場所で初優勝し、大関昇進を確実にした関脇照ノ富士(23=伊勢ヶ浜)が25日、東京・江東区の部屋で会見し「(大関は)上から2番目の地位。これまで以上に頑張らないといけない」と早くも決意を口にした。何かと比較される小結逸ノ城(22=湊)が当初は「大関候補」と目されていたが、完全に立場は逆転。両者の明暗を分けたものとは何だったのか。

 初優勝から一夜明けた照ノ富士は「ずっと夢みたいなことだったんで、まだ信じられない。うれしかったです」と喜びに浸った。今回のVで大関昇進を確実にし「上から2番目の地位。今までやってきた稽古を、もっと増やさないといけない」と早くも意気込んだ。27日の番付編成会議と理事会を経て正式に大関昇進が決定する。

 一方で、すっかり影が薄くなってしまったのが逸ノ城だ。

 2010年3月にモンゴルから同じ飛行機で来日。鳥取城北高でともに汗を流した。照ノ富士が3年早く入門したが、先に大ブレークしたのは逸ノ城だった。昨年秋場所で13勝を挙げ「怪物旋風」を巻き起こしたことは記憶に新しい。翌九州場所で新関脇に昇進し「大関候補」と目された。

 照ノ富士は昨年春場所で新入幕を果たすも、成績は最高で9勝止まり。それが新関脇の今年春場所で13勝と爆発し、今回の優勝で大関の地位を勝ち取った。2人とも体格に恵まれた大型力士。両者の明暗を分けた大きな理由は「稽古量の差」というのが、角界内の一致した見方だ。

 身もふたもない結論とはいえ…実際にやるかどうかは別問題。元大関琴欧洲の鳴戸親方(32)は「大関の力はある。今の大関3人よりも十分に強いから」と照ノ富士の実力を評価。そのうえで「逸ノ城とは稽古の量が全然違う。(逸ノ城に)胸を出したことがあるけど、全然力を出さないから。1日だけならちょっとの差かもしれないけど、1年たてば(両腕を広げて)こんなに違う」と指摘した。

 照ノ富士と同部屋には横綱日馬富士(31)をはじめ、安美錦(36)、宝富士(28)、誉富士(30)と関取衆がひしめく。師匠の伊勢ヶ浜親方(54=元横綱旭富士)による厳しい指導のもと、1日で100番近くをこなしたこともあるほどだ。かたや逸ノ城は部屋での稽古相手は三段目力士。出稽古でも力を出し切らないとなれば、立場が逆転するのも当然ということか。

 照ノ富士は初優勝の要因について「やっぱり稽古じゃないですか。自分の中では、人より多く稽古するって気持ちがあるんで」とキッパリ。このままなら、さらに2人の差は広がっていきそうだ。