「最強横綱」に肩を並べる日は来るのか。大相撲初場所4日目(12日、東京・両国国技館)、横綱照ノ富士(30=伊勢ヶ浜)が幕内宇良(29=木瀬)を突き倒して無傷の4連勝。栃木山以来103年ぶりとなる新横綱からの3連覇へ向けて、視界は良好だ。また、この日の白星で昨年秋場所から22連勝をマーク。照ノ富士は兄弟子との〝約束〟を果たすために、連勝記録を伸ばすことを誓っているという。

 照ノ富士は危ない場面にも動じなかった。宇良にもろ差しを許して土俵際まで寄られるも、押し返して逆襲。最後は左の突きを繰り出すと、相手に尻から崩れ落ちた。取組後は「落ち着いて取れたかなと思う。(相手を)正面に置いてやろうと思っていただけ」と普段通り淡々とした口ぶり。無傷の4連勝で、昨年秋場所から続く連勝を22に伸ばした。

 新横綱からの3連覇へ向けて視界は良好。照ノ富士の兄弟子で伊勢ヶ浜部屋付きの安治川親方(元関脇安美錦)は「(好調は)本人の頑張り。先場所が終わってから、すぐにヒザを治療して痛みを取って。そこからまた体をつくって、土俵(での稽古)を積み重ねることをしっかりやっていた」と場所前の準備に抜かりがなかったことを強調した。

 その安治川親方と照ノ富士は、ある〝約束〟を交わしているという。同親方は2019年名古屋場所限りで現役を引退。当初は20年10月に断髪式を行う予定だった。ところが、新型コロナウイルス禍の影響で2度の延期を余儀なくされることに。そして今年の夏場所後の5月29日、いよいよ「3度目の正直」で晴れ舞台に臨むことが決まっている。

 その上で、安治川親方は照ノ富士とのやりとりを明かす。「5月場所の終わりまで全勝が続くなら、63連勝まで伸びることになるのかな。〝そのくらいの話題を提供して土俵で断髪してくれ〟と冗談交じりで横綱に言うと『それ、いいですね』と言っていた。やってもらわないと困りますね(笑い)」。弟弟子にハイレベルな〝ノルマ〟を課してハッパをかけた。

 63連勝といえば、大横綱の白鵬(現間垣親方)と並ぶ歴代2位の大記録。〝角聖〟双葉山が打ち立てた69連勝(同1位)に次ぐ、途方もない数字だ。白鵬は10年九州場所2日目、当時は平幕だった稀勢の里(元横綱=現二所ノ関親方)に連勝記録を止められると「これが負けか…」の名言を残した。照ノ富士が63連勝に到達すれば、その「最強横綱」に堂々と肩を並べることになる。安治川親方の断髪式に最高の形で華を添えることは間違いない。

 果たして照ノ富士は、ここからどこまで連勝を伸ばしていくのか。優勝争いの行方とともに注目が集まる。