土俵で恩返しを――。大相撲初場所初日(9日、東京・両国国技館)、3連覇を狙う横綱照ノ富士(30=伊勢ヶ浜)は小結大栄翔(28=追手風)をはたき込んで白星発進。立ち合いからノド輪で押し込まれ、足が浮くなど危ない場面もあったが、慌てる様子もなく最後は相手が足を滑らせた。

 大栄翔とは直近6場所で4勝2敗と白星先行も、新横綱で迎えた昨年9月の秋場所で金星を配給するなど、決して簡単な相手ではない。取組後、照ノ富士は「体が自然と動いてくれている」としつつも「ああいう相撲になってしまった」と内容を反省した。

 昨年は6場所のうち優勝4回と圧倒的な強さを見せつけて一気に番付の頂点まで駆け上がった。ヒザの故障や内臓疾患などで一時は序二段に転落しながらも大関復帰を果たし、横綱に昇進。その後も一人横綱の重圧に屈することなく、先場所は初の全勝Vを果たした。

 新横綱からの3連覇を達成すれば、1919年の栃木山以来、103年ぶりの偉業となる。そんな照ノ富士にとって、新たに贈られた三つ揃いの化粧まわしも発奮材料になっているのは間違いないだろう。

 化粧まわしといえば、風景や動物、文字などのデザインが一般的。ただ、今回は美術家の大山エンリコイサム氏の表現によって、これまでとは一線を画す〝作品〟に仕上がった。同氏によれば、横綱の知人から依頼を受け、自身の作風でもある白と黒の2色で立体を表現したという。

「横綱の風格や人格を形の表現を通してスタイルできればと。不屈の精神力、強い精神力というイメージですね。それが少しでも表現できたらと思いました」(大山氏)

 化粧まわしはこの日、照ノ富士の横綱土俵入りでお披露目となった。「いろんな方にいろんな面でサポートしていただいて、それを土俵で恩返ししていきたいと思っています」と話す横綱。賜杯へ向けて上々のスタートを切った。