〝気配り力〟でも横綱だ。大相撲九州場所3日目(16日、福岡国際センター)、横綱照ノ富士(29=伊勢ヶ浜)が幕内若隆景(26=荒汐)をはたき込みで一蹴し、初日から3連勝。取組後は「(まわしを)取らなくても圧力をかけていく感じ。落ち着いてやればいいかなと思っている」と貫禄を漂わせた。

 その照ノ富士には、今場所も心強い援軍がいる。3月の春場所から15日間、照ノ富士の全取組に懸賞を出している、総合化学メーカーの東ソー株式会社(本社・東京)だ。懸賞は出す側の応援の気持ちを形にしたもの。同社は2017年から横綱や大関の取組に懸賞を出して後押ししてきた。

 同社の担当者は「もともとは場所ごとに検討して決めていた。(春場所の照ノ富士は)大関取りで注目度が高まり、さらにケガなどもある中で復活した姿に共感して(懸賞を)出すようになりました。今後も角界を盛り上げてほしいですね」と期待する。

 その春場所の優勝後には照ノ富士から懸賞袋が入った記念額と礼状が送られてきたそうで「力士の方からリアクションがあったのは初めて。やはりケガもあって苦しい思いもされてきた方なので、周りの方への感謝を大切にされる方なのだと感じる」と感激しきりだ。角界では、もらいっぱなしの「ごっつぁん体質」の力士も少なくない中、気配りを欠かさない姿勢からも〝品格〟がうかがえる。

 一方で、同担当者は「これまで弊社が懸賞を出すと、力士の方が休場されたり…」とも。因果関係はないはずだが、横綱が嫌なジンクスを断ち切れば、大きな〝恩返し〟となるはずだ。