元横綱白鵬に恐れられた男が、九州場所(14日初日、福岡国際センター)での奮闘を誓った。

 2年ぶりの開催となった同場所は、熊本出身の大関正代(30=時津風)にとって特別な場所になりそうだ。大関昇進後、初となる地元の本場所に「大関になってから優勝していないので、地元の人にはいいところを見せたい。2年ぶりということで皆さん、待ちに待ったという感じがしている。期待に応えたい」と淡々としながらも静かに闘志を燃やした。

 秋場所後に現役を引退した元白鵬の間垣親方の言葉も発奮材料となっている。最後の対戦となった7月の名古屋場所。この一番で白鵬は立ち合いで土俵際ギリギリまで下がり、会場のどよめきを誘った。その意図について、後にNHKのドキュメンタリー番組で「頭の中でシミュレーションしても、どうやっても正代には勝てない。だから立ち合いで当たらないことを選んだ」と告白。正代の強い当たりを最大限に警戒した上での奇襲だったことを明かしていた。

 右ヒザが万全でなかったとはいえ、大横綱をひるませた正代は「自分の持ち味は立ち合いから前に出る相撲。白鵬関に警戒していただけるのは光栄なこと。単純にうれしい。横綱に警戒されるということはそれだけ実力もついてきたということ。これから伸ばしていけたら」と自信を付けるとともに気を引き締めた。

 その上で、名実ともに一人横綱になり今場所も優勝の大本命と目される照ノ富士(伊勢ヶ浜)に対し「同い年にもなるんで、どうしても他の力士より意識するところは多くある。今度こそはという思い」ときっぱり。白鵬に認められた男が今場所で7場所ぶり2度目の賜杯を手にする。