大相撲春場所10日目(17日、大阪府立体育会館)、横綱白鵬(30=宮城野)が幕内豪風(35=尾車)を押し出して初日から10連勝。幕内で唯一の全勝を守り、優勝34回へ向けて前進した。一方で、この日も支度部屋では報道陣に背中を向けて無言。実は、白鵬の「問題児化」を3年前から危惧していた人物がいる。日本相撲協会外部理事の海老沢勝二氏(80=元NHK会長)だ。かつて横審委員長まで務めた重鎮は、今回の騒動をどう見ているのか。

 白鵬が豪風を一蹴して初日から10連勝。連続2桁勝利を49場所に伸ばし、自らの最長記録を更新した。優勝34回と6連覇に向けて大きく前進するなか、この日も支度部屋では報道陣に背中を向けて無言を貫いた。初場所後の審判批判騒動以来、いまだに態度を軟化させる気配は見られない。一方で、白鵬の「問題児化」を3年前から懸念していたのが日本相撲協会外部理事の海老沢氏だ。

 まだ白鵬が「優等生」だった2012年3月、海老沢氏は本紙に「(白鵬の)一人横綱が長く続くと、朝青龍のようにテングになることだってある」と指摘。かつて横綱審議委員会の委員長として朝青龍の「サッカー騒動」(2007年)など横綱が“暴走”する過程を目の当たりにしてきた。3横綱となった今でも、白鵬と他の力士の実力差は一人横綱のころと何も変わらない。3年前の指摘は今の状況を“予見”していたとも言える。

 その海老沢氏は、今回の騒動をどう見ているのか。「師匠(宮城野親方)が本人に注意したと聞いている。協会としての処分は終わっている。(処分について)私がどうこう言うことはない」と前置きしたうえで「相撲は、礼に始まり礼に終わる。武士道の精神で常に相手のことを尊重しなければならない。どんな理由であれ、審判に対する批判は慎まなければならない」と相撲道の原点を強調した。

 さらに「人間は、うまくいっているときが一番危ない。(初場所のV33達成で)気持ちの緩みが出たのではないか。横綱に限らず、トップに立つ者は常に孤独なものだ。それは一国の総理大臣も同じ。その孤独に耐えて、常に自分を戒めていかなければならない」とクギを刺した。自分の考えが周囲に理解されなかったとしても、頂点に君臨する者は不平や不満を口にしてはいけない――それが「孤独に耐える」ということなのだろう。

 白鵬が沈黙を破ったとき、その口から何が語られるのか。改めて「綱の品格」が問われることになりそうだ。