大関で戻らなアカン! 大相撲初場所初日(11日、東京・両国国技館)、カド番の大関豪栄道(28=境川)が幕内勢(28=伊勢ノ海)を寄り切りで下し、白星発進した。“ナニワの大関”は地元大阪の春場所(3月8日初日、大阪府立体育会館)を前に陥落危機に直面。日本相撲協会の維持員で構成する大阪の「東西会」の重鎮で、横綱審議委員会委員も務める岡本昭氏(岡安商事最高顧問)は来場所の大関残留を“厳命”した。

 カド番脱出へ向けて白星発進した豪栄道は「勝ったのは、とりあえず良かった。前向きにいきたい。内容どうこうより、結果なんで。土俵でしっかり自分の相撲を取るだけ」と表情を引き締めた。昨年7月の名古屋場所後に念願の大関昇進を果たしたが、その後の成績は低迷。新大関で迎えた秋場所は辛うじて千秋楽で勝ち越したものの、続く九州場所は5勝10敗と大きく負け越した。今場所は初のカド番と苦しい土俵が続いている。


 勝てなければ地位を奪われるのが「番付社会」のおきて。だが、豪栄道には絶対に陥落するわけにはいかない事情がある。地元大阪で開催される3月の春場所に、大関として“凱旋”する目標があるからだ。寝屋川市出身の豪栄道は、かねて大阪では絶大な人気を誇ってきた。ファンから送られる声援は、横綱をもしのぐほどだ。


 豪栄道自身も地元で大関としての晴れ姿をお披露目することを夢見てきた。しかも、大阪出身の大関が誕生したのは1970年の前の山以来、実に44年ぶりのこと。それが、あろうことかご当所場所を関脇陥落で迎えることになったとしたら…。それこそ夢が「悪夢」に変わってしまう。本人の落胆もさることながら、地元ファンの失望は計り知れない。


「東西会」の重鎮で、横審委員の岡本氏は“ナニワの声”を代弁。「次の大阪場所(春場所)は絶対に大関の地位で戻ってこなアカン。地元の期待は大きいし(大関昇進後に)化粧まわしだって、何本もつくってもらってるんだから。カド番? 大関になってからの2場所を見たら、かなり厳しい。ただ、これを乗り越えたら気持ちの面でも大関としても成長できるはず。とにかく、まずは勝ち越すことが大事」と力説した。


 勝てば天国、負ければ地獄。豪栄道の相撲人生の中でも、かつてない正念場と言えそうだ。