【名古屋場所】白鵬 “非正攻法”Vの波紋 明かしていた覚悟「もし優勝争いができなかったら…」

2021年07月19日 11時00分

土俵上で感情を爆発させた白鵬

 これで「完全復活」と呼べるのか…。大相撲名古屋場所千秋楽(18日、愛知県体育館)、6場所連続休場明けの横綱白鵬(36=宮城野)が大関照ノ富士(29=伊勢ヶ浜)を小手投げで下し、昨年春場所以来7場所ぶり45度目の優勝を全勝で決めた。ひとまず進退問題は封じ込めた格好だが、奇襲や“エルボー”など正攻法からは程遠い取り口で新たな波紋を広げている。その大横綱の賜杯奪回の舞台裏を追跡した。

 大横綱が執念で賜杯をもぎ取った。2012年名古屋場所の日馬富士と白鵬以来、9年ぶりとなった千秋楽の全勝対決。両者は立ち合いで腰を下ろさずにらみ合い、激しく火花を散らし合った。白鵬は右の強烈なカチ上げを繰り出すと、張り手を連発。その後は右四つで組み止め、小手投げを連発して照ノ富士の巨体を土俵に転がした。

 勝負が決まった瞬間、白鵬はガッツポーズしながら雄たけび。土俵上で珍しく感情を爆発させた。表彰式の優勝力士インタビューでは「最高です。(3月に手術した)右ヒザがボロボロで言うことをきかなかったので、この一番にすべてをかけようと気合を入れた。まさか、この年になって全勝優勝なんてできると思わなかった。本当にホッとしています」と安堵の表情を浮かべた。

 昨年は年5場所のうち皆勤できたのが1場所だけ。横綱審議委員会からは「引退勧告」に次いで重い「注意」を決議された。今年の初場所は新型コロナウイルスに感染して休場。再起をかけた春場所は途中休場し、古傷の右ヒザ手術に踏み切った。手術直後は松葉づえの生活。名古屋場所を控えた6月の時点でも階段を1段ずつしか下りられず、出場を危ぶむ声さえあった。

 今場所前、白鵬は右ヒザにメスを入れた理由について「名古屋場所、秋場所、その先も頑張るという気持ちで手術した」と説明。一方で、自身の進退に関しては「初めは『最後の場所』という意味なのかと思っていたけど、その後、この進退という言葉の意味を理解できるようになった。進むのか、退くのか、止まるのかというね。とにかく今はやることをやって、頑張りたい」と話していた。

 この発言に、一部では「逃げ道をつくった」とも評された。しかし大横綱は結果が出なければ、土俵を去る覚悟で臨んでいた。今場所に臨むにあたり、白鵬は親しい知人に次のように明かしていた。

「今場所は照ノ富士を倒して優勝します。もし優勝争いができなかったら…その時は考えるところがあります」

「引退」の2文字こそ言葉にしなかったものの、その口ぶりから並々ならぬ決意が漂っていたという。実際、今場所の白鵬はなりふり構わず勝ちに行く姿勢が目立った。序盤戦から張り手を多用し、14日目には大関正代(29=時津風)を相手に俵付近まで下がって手をつく“奇襲作戦”。日本相撲協会の八角理事長(58=元横綱北勝海)から「横綱がしてはいけない」と苦言を呈された。

 千秋楽も立ち合いから相手の視界を遮る動きや、何度も批判を浴びてきた「エルボー」まがいのカチ上げで主導権を奪いに行った。勝負に徹したとの見方がある一方で、親方衆の間には「まともに行ったら勝ち目はないと見たのだろう。力的には照ノ富士の方が上。(引退は)時間の問題だ」との厳しい指摘もある。

 優勝しても満身創痍の体であることには変わりなく、横綱の強さより他の力士のふがいなさも目立っていた。とても本当の意味での「完全復活」とは言えない状況だったのだ。

 ひとまず大横綱は引退危機を脱し、東京五輪を現役力士で迎える目標も実現させた。今後へ向けて「これで横綱として899勝。あと1勝で900勝なので、1勝目指して頑張っていきます」。この先、大横綱はいつまで土俵に立ち続けることができるのか。

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