目指すは〝角聖〟の偉業だ。大相撲名古屋場所12日目(15日、愛知県体育館)、綱取りに挑む大関照ノ富士(29=伊勢ヶ浜)が小結明生(25=立浪)をきめ倒して自身初の初日から12連勝。横綱白鵬(36=宮城野)とともに全勝を守り、今場所後の横綱昇進へ向けて大きく前進した。ただ、本人の野望は番付の頂点だけではない。双葉山が果たした「3連覇」と「綱取り」の同時達成を狙っている。

 照ノ富士は新小結の明生をねじ伏せて自己最多の12連勝。取組後は「落ち着いて取れたのでよかった。12連勝? 一日一番の気持ちでやっているので、特別な思いはない。残り3日間、しっかり頑張りたい」と浮かれることなく表情を引き締めた。すでに安定感は〝横綱級〟だ。2場所前は関脇で12勝を挙げて優勝。先場所は大関で12勝して連覇を達成した。

 横綱昇進の条件は「大関で2場所連続優勝か、それに準ずる好成績」。師匠で審判部長の伊勢ヶ浜親方(61=元横綱旭富士)は「優勝に準ずる成績であれば」との見解を示している。このまま千秋楽まで優勝争いをすれば、V逸でも横綱に昇進する可能性が高い。ただ、本人が狙っているのは「3連覇」と「綱取り」の同時達成だ。

 その偉業を過去に成し遂げた不世出の横綱がいる。「昭和の角聖」「相撲の神様」など数々の異名を持つ双葉山だ。不滅の大記録とされる69連勝を達成したほか、優勝12回のうち全勝が8回(1場所11日制、13日制を含む)。年2場所制だった1936年から37年にかけて、3連覇で横綱昇進を果たした。これ以降は3場所連続優勝で横綱となった力士はおらず、今場所を制して番付の頂点をつかめば84年ぶり2人目の快挙となる。

 本人はメディアなどには多くを語っていないものの、秘める思いは強い。照ノ富士をよく知る伊勢ヶ浜部屋・東海地区後援会の松原鉄夫会長は今回の綱取りに「状況から見ても大丈夫だと思う。(大関の)貴景勝、朝乃山も休場している。逆にここで(横綱に)ならなかったらいつなるんだという感じ。白鵬関は15日間やるのも久しぶりだし、星の取りこぼしもあり得る」と太鼓判。最後は一騎打ちを制することを確信している。

 双葉山以来の偉業についても「本人も『会長、3連覇で横綱になったの双葉山関しかいないんですよね。僕は名古屋は調子いいんで任しといてください』と言っていた。やはり強く意識しているようだ」と明かした。大横綱とのマッチレースを制した上で、角聖の横に自身の名を刻むことができるか。