「怪物」の本当の実力は? 大相撲九州場所11日目(19日、福岡国際センター)、新関脇逸ノ城(21=湊)が幕内豊響(30=境川)を突き落としで退け、6勝5敗と白星を先行させた。腰の張りで朝稽古は欠席したが「休んだので、だいぶいいと思います。あと2番で勝ち越し? 頑張ります」と関脇残留に意欲を見せた。

 秋場所で13勝を挙げたインパクトに比べれば、今場所は物足りない印象は否めない。先場所は横綱大関6人のうち3人を撃破したが、今回は4人と対戦して1度も勝てていない。“苦戦”の主な原因は、相手の研究が進んだこと。負けた相撲は、いずれも弱点である立ち合いのスピード不足を突かれている。

 日本相撲協会の北の湖理事長(61=元横綱)は「初日に日馬富士(30=伊勢ヶ浜)に、いっぺんに持っていかれた。あれが(他の力士の)ヒントになっている」と指摘。怪物といえども、上位はパワーだけで勝てるほど甘くない。ただ忘れてはいけないのは、今場所の逸ノ城がほとんど稽古をせずに臨んでいることだ。

 10月中旬にストレスによる帯状疱疹を発症。大幅に調整が遅れ、場所本番まで関取衆との稽古が1回もできなかった。まだデビューから1年に満たない逸ノ城が「ぶっつけ本番」に対応するノウハウを持ち合わせているはずもない。そんな力士が新三役での勝ち越しはおろか、10勝の可能性さえ残しているのだ。

 師匠の湊親方(46=元幕内湊富士)は今場所の“足踏み”について「場所前の稽古不足」とした上で「来場所は期待してください」と不敵な笑み。まだまだ怪物は「底」を見せていない。