大相撲九州場所(11月9日初日、福岡国際センター)の新番付が27日に発表され、9月の秋場所で「怪物旋風」を巻き起こした逸ノ城(21=湊)が新関脇に昇進した。幕下付け出しデビューから所要5場所で新三役は昭和以降最速。まずは今場所で「最速V」に挑む一方で、角界では早ければ来年1月の初場所後に「最速大関」が誕生する可能性も指摘されている。

 九州場所の新番付で一気に関脇まで上がった逸ノ城は「こんなに早くなれるとは思っていなかったので、本当にうれしいです」と喜びを口にした。今後も次々と角界の記録を塗り替えていくのは必至で、その力を備えていることも証明済み。新入幕の秋場所で1横綱2大関を撃破し、13勝を挙げて千秋楽まで優勝争いを繰り広げたことは大きなインパクトを残した。

 次の目標として「最速V」を視界に入れるのも自然な流れだ。師匠の湊親方(46=元幕内湊富士)は「まずは8番が目標。その8勝が何日目にできるかで、さらに上の目標が出てくる」と慎重な姿勢を見せつつも「優勝や大関の最速記録は?」と報道陣に“逆取材”する一幕も。怪物の底知れぬ力を間近で感じているが故に、頭の片隅に情報をインプットしておきたかったのだろう。

 昭和以降、初土俵からの最速Vは輪島(幕下付け出し)の15場所。逸ノ城が6場所で優勝すれば、大幅な記録更新となる。さらに、今場所Vなら来年1月の初場所後の大関昇進も現実味を帯びてくる。角界関係者も「今場所優勝するようなことがあれば、次(初場所)の成績次第では大関という話が出てもおかしくない」と指摘した。

 大関取りで現在の「目安」とされているのは、三役(関脇、小結)の地位で3場所合計33勝。基準通りなら、東前頭10枚目だった先場所の成績はカウントされない。幕内上位の三役と幕内下位では対戦相手のレベルが異なるためだ。だが、逸ノ城は秋場所で1横綱2大関に加えて三役経験者を6人撃破しての13勝。内容的にも幕内上位での「準優勝」に値するとの見方もできる。

 最近の傾向として、大関取りの条件はあくまで「目安」として考えられ、基準は時代とともに変化している。過去には数多くの“例外”も存在。今回の九州場所で優勝し、次の初場所も好成績なら、世間の注目にも後押しされ、大関取りの機運が一気に高まる可能性は高い。

 ちなみに、初土俵から大関昇進までの最速記録(昭和以降)は羽黒山らの所要12場所。逸ノ城なら、もしかしたら…。まだ机上の空論かもしれないが、怪物は伝説の記録の更新さえ期待させてしまうムードも漂わせている。