ここまでとは…。大相撲の「第73回全日本力士選士権大会」が6日、東京・両国国技館で開かれ、9月の秋場所で旋風を巻き起こした幕内逸ノ城(21=湊)が1回戦で幕内遠藤(23=追手風)と初対戦。一方的に寄り切る完勝で、注目の一番を制した。両力士ともザンバラ髪で新入幕のスピード出世を果たしたが、いまや角界内の評価は天と地ほどの開きが…。“実力社会”の厳しい現実が改めて浮き彫りになった。

 注目のスピード出世対決は「モンゴルの怪物」に軍配が上がった。逸ノ城が「(遠藤戦は)普通に。組んでみた感想? 特に何も」とクールな反応だったのとは対照的に、完敗した遠藤は「(逸ノ城は)ただただ、大きかった…」。体格で圧倒されたことを認めた。本場所とは異なるトーナメント形式の“花相撲”とはいえ、歴代の優勝者は横綱大関ばかり。簡単に勝ち上がれるほど甘くはない。

 実際、逸ノ城は準決勝まで進出して実力の一端は十分に示した。両力士の明暗は、9月の秋場所の成績を反映した結果とも言える。逸ノ城は13勝を挙げて殊勲賞と敢闘賞をダブル受賞した。かたや遠藤は3勝12敗の大敗。しかも、3勝のうち1勝は不戦勝だった。すでに角界内では場所中から逸ノ城の評価が高まり、遠藤は急落。その差はさらに拡大している。

 日本相撲協会の北の湖理事長(61=元横綱)は秋場所の逸ノ城を「100点以上」と高く評価したのに対して、遠藤には「前に落ちる相撲が多い。照ノ富士(22=伊勢ヶ浜)や大砂嵐(22=大嶽)といった(若い)力士と芯から汗が出る稽古をしないと。自分から進んでやらないとだめだ」と手厳しい。他の親方も「逸ノ城はすぐにでも大関になる。遠藤? 今のままなら大関は無理。三役(関脇、小結)に上がれるかどうか」とまで言い切った。

 つい数か月前までは、遠藤の評価はこんなものではなかった。少なくとも今年3月の春場所で大関稀勢の里(28=田子ノ浦)を撃破し、5月の夏場所で横綱鶴竜(29=井筒)から初金星を挙げたころまでは近いうちの新三役昇進、ゆくゆくは大関挑戦の期待感さえあった。それが半年もたたないうちに消し飛んでしまうとは…。

 期待が大きかった分だけ、反動も大きいということか。今後も「怪物」と比較される、つらい立場が続きそうだ。