来年には白鵬時代が終わる? 大相撲秋場所千秋楽(28日、東京・両国国技館)、横綱白鵬(29=宮城野)が横綱鶴竜(29=井筒)を掛け投げで下し、千代の富士(現九重親方)に並ぶ通算31回目の優勝を決めた。大鵬が打ち立てた最多優勝32回の大記録に王手をかける一方で、白鵬の師匠の宮城野親方(57=元幕内竹葉山)は「世代交代」の時期について本紙に言及。早ければ来年にも「逸ノ城時代」が到来する可能性があるというのだが、その真意は――。

 通算31回目の優勝を決めた白鵬は「賜杯の重み? たいへん重かったです。ホッとしました。千代の富士関と並んだのでうれしい」と喜びを口にした。今回の優勝で、ついに大鵬のV32に王手。次の九州場所(11月9日初日、福岡国際センター)ではいよいよ不滅の大記録に挑むことになる。

 日本相撲協会の北の湖理事長(61=元横綱)は「(大鵬の記録は)あくまで通過点。追いついて、そこからいくつ伸ばせるか。他の横綱が取りこぼすうちは、白鵬の優勝が続いてもおかしくない」と早期の達成と大幅な更新を予想する。体力面ではピークを過ぎたとはいえ、現時点でも頭一つ抜けた存在。今場所も横綱鶴竜ら優勝候補と目された力士が相次いで脱落し、地力の違いを見せつけた。

 今年一年で見ても5場所のうち4度優勝し、今場所で3連覇。Vペースに陰りは見られない。それでも、来年以降も白鵬の「一人勝ち」の状況が続くかというと、そうとも言い切れない。師匠の宮城野親方は「(大きなケガなどがなく)普通にいけば、あと3年くらいはやれると思う」と前置きした上で、次のような不安を口にする。

「(大鵬の)記録を達成してしまったときに、精神的にどうなるか。そこで気持ちが切れてしまうのが一番怖い。ガタッとくれば、一気に世代交代することがあるかもしれない」

 これまで白鵬は過去の大記録を達成していくことをモチベーションにしてきた。特に2010年初場所後に朝青龍が引退して以降は本当の意味で「ライバル」と呼べる存在がいなかったのだから、なおさらだ。

 言い換えれば、近年の白鵬が追いかけてきたのは、歴代の大横綱たちの背中だった。貴乃花、朝青龍、今回の千代の富士…。

 そして、最大の目標にしてきた大鵬の優勝32回に並び、さらには超えてしまったらどうなるか。目の前にあるのは、もはや“数字”だけ。具体的な目標を失い、燃え尽きてしまっても不思議ではない。

「大鵬超え」となる優勝33回の達成は、最短で来年1月の初場所。師匠が言うところの「世代交代」のタイミングは、年明け早々にもやってくる。くしくも、今場所は新時代の到来を予感させる力士が出現した。新入幕の逸ノ城(21=湊)だ。白鵬は逸ノ城が入門する前から「自分を抜くのは、この子じゃないか」と目をつけていたほど。その見込み通りに一大旋風を巻き起こした。

 果たして、白鵬は今後も「最強」の座に君臨し続けるのか、それとも次世代に明け渡す時がくるのか。そう遠くないうちに、結論が出ることになりそうだ。