次は番付の頂点で――。大相撲夏場所初日(9日、東京・両国国技館)、大関に復帰した照ノ富士(29=伊勢ヶ浜)が幕内明生(25=立浪)をきめ出して白星発進。先場所に続く連覇に向けて上々のスタートを切った。2017年秋場所以来、21場所ぶりに大関返り咲きとなったが、この快進撃はまだまだ終わりそうにない。そんな中、ゆかりの地からは横綱となっての“凱旋”を期待する声が上がっている。

 まさに“大関相撲”だった。照ノ富士は明生にもろ差しを許しても全く動じない。両腕で抱えながら前へ出ると、そのまま力でねじ伏せた。取組後は「前に足が出たのでよかった」と淡々と振り返った。両ヒザの故障や内臓疾患などで一時は序二段まで転落。そこから不屈の精神ではい上がり、17年秋場所以来の大関に返り咲いた。大関での白星は実に1355日ぶりとなったが「特に深い考えはない」と意に介さなかった。

 史上最大の復活劇とも言われる照ノ富士の大関復帰には、ゆかりの地からも喜びの声が上がっている。神奈川・出雲大社相模分祀の草山清和分祀長は「多くの人の励みになりますよね。(ヒザは)まだ痛いと思うんですが、それでも痛みをこらえて一生懸命いい相撲を取っていますよ」と称賛した。

 同分祀では師匠の伊勢ヶ浜親方(60=元横綱旭富士)が現役時代から節分の豆まきを行い、引退後は部屋の弟子たちとともに参加している。ケガや病気に苦しんだ照ノ富士も例外ではない。草山氏が「下(序二段)に落ちたときも来てくれた」と話すように、ここまで“皆勤”を続けているという。

 ところが、約40年続く恒例行事も新型コロナウイルス禍により、昨年から2年連続で実施できていない。ワクチン接種が普及するなど終息しなければ再開のメドは立たないが、同分祀関係者からは「こうなったら横綱に上がって豆まきに来てもらえたら」と、番付の頂点での“凱旋”を期待する声が上がっている。

 その出雲大社と相撲の関係は古く、出雲国造第13代野見宿禰(のみのすくね)は「相撲の祖」と伝えられている。一方で、縁結びとともに病気平癒のご利益もあるとされ、体調面で不安を抱える大関にとっては、ありがたい神様に見守られているのかもしれない。

 この日は自身を含めて4大関が揃って白星。連覇と綱取り挑戦に向けて第一歩となった照ノ富士は「(15日間)全力を出して頑張りたい」と力を込める。横綱不在の今場所も土俵の「主役」を務めることになりそうだ。