大相撲秋場所(14日初日、東京・両国国技館)の新番付が発表され、新大関の豪栄道(28=境川)が東京・足立区の部屋で会見した。大関昇進を果たした名古屋場所で左ヒザを負傷し、8月の夏巡業は全休。いまだ本格的な稽古は再開できていない。豪栄道は「秋場所はいい状態で臨めると思う」と話しているが、本当に大丈夫なのか?

 秋場所の新番付を手に取った豪栄道は「ずっと目標にしてきた地位なので、感慨深いものがある。常に勝つことが求められる地位。思い切ってやるしかない」と表情を引き締めた。その一方で、大関の地位と引き換えに支払った“代償”も大きかった。名古屋場所12日目に左ヒザを負傷。強行出場を続けた結果、場所後に「左膝外側半月板損傷」と診断された。

 新大関の「お披露目」となるはずだった8月の夏巡業は全休。実は当初、豪栄道はケガを押してでも巡業に参加するつもりだったという。事情に詳しい関係者は「本人はお客さんのために土俵入りだけでもやるつもりで巡業に行く気だったけど、師匠(境川親方)が止めたそうだ。(豪栄道は)体格だけで相手を圧倒できる相撲じゃない。早く治さなければ致命傷になってしまう」と舞台裏を明かした。

 師弟は苦渋の末に巡業全休を決断。治療に専念したことで、ここまでは順調に回復した。ただ、場所本番に向けては、まだまだ楽観はできない。豪栄道は現在の状態について「先週から立ち合いで当たる稽古も始めた。そろそろ申し合いも始めていきたい。日に日に回復してきているので、秋場所はいい状態で臨めると思う」と話す一方で、5日の横綱審議委員会の稽古総見については「今の時点では何とも言えない」と言葉を濁した。

 普段から幕内屈指の稽古量を誇るだけに、一刻も早く本格的な稽古を再開したいところ。その半面、再び患部を悪化させてしまえば元も子もない。今後の稽古内容は「その日、その日の回復具合を見て」(豪栄道)と慎重に見極めていく構えだ。いずれにせよ、新大関として迎える場所は“急仕上げ”になることは避けられそうにない。大きな不安を抱えたまま本番に臨むことになりそうだ。