大相撲名古屋場所11日目(23日、愛知県体育館)、関脇豪栄道(28=境川)が全勝の横綱白鵬(29=宮城野)を撃破して波乱を演出。大関琴奨菊(30=佐渡ヶ嶽)が1敗で並び、混戦模様となった。外国人が席巻する角界で、8年ぶりに日本人力士が優勝する可能性が出てきた。一方で和製力士のホープ、幕内遠藤(23=追手風)は苦戦。幕内上位の壁を乗り越えるために必要なものとは――。

 期待の日本人力士として注目を集める遠藤はこの日、幕内北太樹(31=北の湖)に小手投げで快勝。取組後は「いつも通りにいこうと思っていました。勝ててよかったです。先のことは考えず、明日の一番に集中したい」と気を引き締めた。6勝5敗と白星が先行し、勝ち越しの目も出てきた。一方、今場所は立ち合いの威力不足という弱点が改めて浮き彫りとなっている。

 課題を克服するためには、何が必要なのか。日本相撲協会の北の湖理事長(61=元横綱)は「立ち合いの鋭さを身につけないといけない。上の人と稽古をして、向かっていく気持ちでやらないとダメだ」。遠藤が場所前の稽古(稽古総見や巡業を除く)で上位力士に胸を借りたのは、3月の春場所だけだ。

 5月の夏場所、そして今場所も所属の追手風部屋で十両大栄翔(20)らとの稽古に終始した。こうした遠藤の行動と、本場所での苦戦は無関係ではない。稽古で上位陣の圧力やスピードを体感しなければ、レベルアップは見込めそうにない。さらに、格下相手と稽古を続けることの“弊害”も指摘されている。

 審判部副部長の朝日山親方(64=元大関大受)は「下の相手とばかり稽古をしていると、自然と受ける相撲が身についてしまう。遠藤がやらなければいけないのは、自分から前に出る相撲。下と何番やっても力を磨くことにはならない。別に、いきなり横綱や大関に胸を借りなくてもいい。幕内同士で稽古をするだけでも違ってくるはず」。

 やはり出稽古が必要という点で、見方は一致している。今場所で勝ち越せば新三役の可能性があるとはいえ、わずか1場所で転落してしまえば何の意味もない。上位に定着するためには、稽古から見直す必要がありそうだ。