大相撲名古屋場所初日(13日、愛知県体育館)、横綱白鵬(29=宮城野)が小結安美錦(35=伊勢ヶ浜)を押し出しで退け、白星発進した。今場所は優勝30回の大台に挑む一方で、その先にある大鵬の優勝32回を超えるのは時間の問題だ。大相撲の歴史においても類を見ない前人未到の領域に突き進む最強横綱。もはやライバル力士たちの姿など眼中になく、舞台裏では何とも“重み”のあるひと言が…。

 V30に向けて好スタートを切った白鵬は「前に出る圧力というか、土俵勘、相撲勘といったものが出た一番。(最後は)力を抜いて押し切った」と自画自賛。大鵬に並ぶ幕内通算746勝目には「うれしいですね」と素直に喜んだ。

 今場所は優勝30回の大台に挑むが、よほどのことがない限り、その先にある大鵬の優勝32回超えまで突き進むのは間違いないところ。実際、角界内では、V32は「通過点」との見方が支配的だ。北の湖理事長(61=元横綱)は「まずは30回が目安でしょう。あとはケガさえしなければ、大鵬さんの32回は破ると思う。年齢的にもまだまだ老け込む年じゃない。34回か35回…他の横綱が優勝できなければ、もっといく」と予測する。もはや「大鵬超え」は前提のようなもので、あとはどれだけ大幅に記録を塗り替えるかが焦点になってくる。

 白鵬自身も前人未到の領域に照準を合わせており、ライバル力士たちは眼中にない様子。そのことをのぞかせる出来事もあった。3月の春場所後に鶴竜(28=井筒)が現役3人目の横綱に昇進した直後のことだ。和製大関の稀勢の里(28=田子ノ浦)は4人目の横綱になれるのか? 関係者から水を向けられた最強横綱は、貫禄たっぷりに次のように言い放ったという。

 白鵬「稀勢の里も、横綱になればいいんじゃないの」

 白鵬にとっては、3横綱になろうが、4横綱になろうが同じこと。一人の大横綱と、その他の“並の横綱”がいるだけだ。どれだけ横綱の人数が増えようとも、自らが横綱として積み上げてきた実績は揺るがない。前出の関係者は「まるで人ごとというか、“格が違う”という口ぶりだった」。誰が横綱になるかではなく、横綱として何を成し遂げるかが重要ということなのだろう。

 初日の横綱大関陣は全員安泰。ただ、今場所も白鵬が優勝争いの絶対的な本命であることには変わりはなさそうだ。