勝負の分かれ目は「心」だった。大相撲夏場所千秋楽(25日、東京・両国国技館)、横綱白鵬(29=宮城野)が横綱日馬富士(30=伊勢ヶ浜)を上手投げで下し、14勝1敗で29回目の優勝を果たした。最後まで優勝を争った大関稀勢の里(27=田子ノ浦)は横綱鶴竜(28=井筒)を破って13勝2敗。悲願の初Vは1差で逃したものの、日馬富士(11勝4敗)と鶴竜(9勝6敗)の両横綱を上回る好成績を残した。


 次の名古屋場所(7月13日初日、愛知県体育館)の成績次第では、3度目の綱取り挑戦も見えてくる。ただ、今後も目の前に立ちふさがるであろう「白鵬の壁」を打ち破るのは、容易ではない。両者の力量の差が浮き彫りとなったのは、12日目の直接対決。ともに1敗同士で、優勝の行方を左右する大一番だった。


 白鵬の師匠の宮城野親方(56=元幕内竹葉山)は、取組を振り返って次のように指摘する。「(稀勢の里は)すぐに熱くなってしまうところが相変わらず。あの程度のことで冷静さを保てないようでは、なかなか上(横綱)に上がれない」


 ここで言う「あの程度」とは立ち合いのシーン。白鵬にじらされた稀勢の里は2度突っ掛ける格好に。3度目は白鵬が立ったところに慌てて合わせにいき、一方的に寄り切られた。


 3月の春場所も稀勢の里が立ち合いの“神経戦”の末に完敗を喫したばかり。五分の立ち合いなら互角の勝負に持ち込める力がある半面、心理的な駆け引きではまだまだ横綱のほうが一枚も二枚も上手ということなのだろう。


 大鵬の優勝32回を視界にとらえた白鵬は「(3月に)29歳になって、29回目の優勝。うれしいです」と高らかに勝利宣言。一方で、稀勢の里は「まだまだ地力が足りない」と悔しさをにじませた。和製大関が賜杯を抱く日は来るのか――。