勝てば逆転Vに望みを残し、負ければ脱落の一番で異例の“珍事”が起きた。日馬富士と稀勢の里による2敗同士の対戦。日馬富士は頭で当たって体を左に開くと、とっさのはたき込み。稀勢の里はこらえきれずに転がされた。その直前に日馬富士の右足かかとが出ているようにも見え、行司軍配は稀勢の里に。すぐさま審判が物言いをつけた。

 立行司の木村庄之助は「足が出ているように見えた」と説明する一方で、審判の協議の対象となったのは「日馬富士の右足」と「日馬富士の左手が稀勢の里のまげにかかっているのでは」の2点。ビデオ判定と協議の結果、日馬富士のまげつかみによる「反則負け」となった。12日目には鶴竜が横綱初となる、相手のまげつかみによる「反則勝ち」をしたばかり。そのわずか2日後に、今度は横綱の反則負けとなった。

 横綱の反則負け自体も2003年名古屋場所の朝青龍しか前例がない。逆転優勝をかけた一番は異例の決着となった。もっとも、日馬富士には自覚があったようで審判の協議を待つ間もバツが悪そうな表情。支度部屋に引き揚げると「(手がまげに)入っちゃったんだよな。抜けなかった。もう分かっていた。右足は残っていた? はい。(軍配が)逆だったら『引っ張りました』と言いますよ」と苦笑いを浮かべるしかなかった。

 逆に“命拾い”をした格好の稀勢の里は「つかまれた感触? ちょっと分からない。(日馬富士の右足は)俵の上にしっかりあった。それはないと思った」。千秋楽の鶴竜戦に向けて「気持ちを切らさず、いつも通りいけたら」と表情を引き締めていた。