【初場所】大栄翔〝翔んで平幕V〟埼玉栄の恩師が明かす「カメ素顔」

2021年01月25日 05時15分

初優勝を決め、賜杯を手に笑顔を見せる大栄翔

〝翔んで平幕V〟の原動力とは――。大相撲初場所千秋楽(24日、東京・両国国技館)、幕内大栄翔(27=追手風)が幕内隠岐の海(35=八角)を突き出して13勝2敗で初優勝。埼玉県出身力士では、史上初となる快挙を達成した。これまでは地味な存在で脚光を浴びることはなかったが、反骨心と地道な努力を積み重ねてついに栄冠を獲得。母校・埼玉栄高時代の恩師が大栄翔の〝カメ素顔〟を本紙に明かした。

 持ち味の突き押し相撲が大一番でも威力を発揮した。大栄翔は強烈なノド輪で隠岐の海をのけぞらせると、何もさせずに一方的に突き出す完勝。表彰式で初めて賜杯を抱いた大栄翔は「うれしさしかない。(賜杯が)あんなに重いものだとは思っていなかったのでビックリした。言葉が見つからないくらいうれしい」と夢見心地で喜びをかみしめた。

 今場所の番付は西前頭筆頭。いわゆる「平幕」で下馬評も高くはなかったものの、格上の三役力士を総ナメにする活躍でダークホースが栄冠をつかんだ。埼玉県出身力士の優勝も史上初の快挙となった。近年は映画「翔んで埼玉」の大ヒットで盛り上がった県民も、今度は大相撲でフィーバー。地元の朝霞市役所ではパブリックビューイングが行われるなど感動と興奮に包まれた。

 一躍、埼玉のヒーローとなったが、ここまでの相撲人生は決して順風満帆だったわけではない。埼玉栄高の山田道紀監督によると、高校時代の大栄翔は「(1、2年生時は)目立った存在ではなかった。4、5番手という感じで、そんなに強くなかった」という。

 それでも地道に努力を積み重ねて一歩ずつ成長。ついに3年生で頭角を現し、インターハイで団体2位、個人3位の好成績を収めた。恩師は「辛抱強い人間だから。伸び悩んでいても腐らず頑張っていれば、いつかは結果が出ると証明した」と当時を振り返った。その大栄翔は母子家庭で育ち、当初の大学進学の希望から親孝行を優先してプロの道を選んだ。

 だが、角界入りして待っていたのは、高校時代と同様にライバルたちの陰に隠れる日々だった。後から入門した幕内遠藤(30)に出世争いで後れを取り、埼玉栄高の後輩の貴景勝(24=常盤山)も先に優勝して一気に大関まで駆け上がった。ここでも、大栄翔は持ち前の負けん気を発揮。押し相撲に磨きをかけながら、逆転のチャンスが訪れるのを待ち続けた。

 山田監督は「特に先場所は貴景勝が優勝して悔しい気持ちがあったと思う。でも、芯が強い子だから『強くなりたい』という一心で頑張ってきたんだろう。エリートタイプではなく努力家? そう。そういう子のほうが強い。努力をすれば報われるし、一生懸命やればいいことがあるといういい見本。悩んでいる子、うまくいかない子に勇気を与えてくれる」と教え子の快挙を絶賛した。

 まさに「ウサギとカメ」の寓話を体現するような相撲人生。苦労を重ねている分、多くの後輩たちにとっても〝カメでも翔べる〟と、格好の手本になるというわけだ。

 ついに角界の主役となった大栄翔は「負けたくない気持ちもあったし、稽古をするしかないと。稽古の結果が出てよかった」。次なる目標の三役復帰、そして大関挑戦へ向けて、これからも努力を積み重ねていく。