角界も〝緊急事態〟だ。大相撲初場所(10日初日、東京両国国技館)が目前に迫る中、日本相撲協会は親方や力士ら約900人の全協会員を対象に新型コロナウイルスのPCR検査を緊急実施することを決定した。角界では横綱白鵬(35=宮城野)が感染して衝撃が走ったばかり。全員検査の結果次第では大混乱が生じる可能性もあるだけに、これまでにない緊張感に包まれている。

 相撲協会は7日に各部屋へ検査キットを配布。8日に回収して、その日のうちに検査を行う。取組編成会議は検査結果が出てから開くため、通常の初日2日前(8日)から前日(9日)へ変更される異例の事態となった。芝田山広報部長(58=元横綱大乃国)は「お客さまの安心安全を一番に頭に置いて、検査を決めた。信頼性を高めていくということ」と説明した。

 角界内は昨年末からコロナ禍への対応に追われている。荒汐部屋では幕内力士を含む12人の集団感染が発生。湊部屋でも行司1人に陽性反応が出た。そして、ついに横綱白鵬までもが感染し、大きな衝撃が走った。こうした中で政府は首都圏の1都3県に緊急事態宣言を再発令。力士らの健康を守るだけでなく、観客の不安を払拭するために緊急検査に踏み切った。

 ただ、親方、力士、行司、呼出、床山ら全協会員の人数は約900人にも上る(検査実施済みの一部の部屋は除く)。感染症に詳しい医療関係者は「PCR検査を実施すれば、1%は陽性反応を示す」と指摘した。データ通りなら感染者ゼロは考えにくく、最低でも10人前後は陽性反応を示す計算になる。集団生活を送る相撲部屋であれば、さらに人数が膨れ上がっても何ら不思議ではない。

 しかも、全員の検査結果が判明するのは、初日を翌日に控えた9日になる見込み。仮に大人数の陽性者が出た場合には、取組編成などをめぐって大混乱が生じる可能性もある。芝田山部長は「万が一、検査で陽性者が出た場合は感染症専門の先生の話を聞きながら、どうするかを一つひとつ決めていく。なるようにしかならない。あとはどういうふうに対処するか」と話しているが…。

 いずれにせよ、慌ただしい中での〝出たとこ勝負〟となる印象は否めない。果たして、新年最初の場所は無事に初日を迎えられるのか。今はただ、感染者が最小限にとどまることを願うばかりだ。