【The インタビュー~本音を激白~】年頭から連載「The インタビュー」がスタート。第1回に登場するのは大相撲11月場所で現役を引退した元大関琴奨菊の秀ノ山親方(36)だ。がぶり寄りを武器に大関まで上り詰め、2016年初場所で日本出身力士として10年ぶりに優勝。仕切り前に大きく背中を反らせる「琴バウアー」で角界の人気者になった。初場所(10日初日、東京・両国国技館)は横綱白鵬(35=宮城野)のコロナ感染で暗雲が漂うが、“デビュー”目前の同親方を電話で直撃。引退後の近況から親方としての抱負まで全てを語り尽くした。 

 ――引退から約2か月。親方になった実感は

 秀ノ山親方(以下秀ノ山)まだ協会の仕事をしていないからピンとこなくて。初場所で警備の仕事をして(現役力士の)みんなを花道から見たときに、もっと実感するんじゃないのかな。

 ――引退後は何をしていたのか

 秀ノ山 実は、(昨年)11月末に入院して手術を受けました。鼻の中の骨が曲がっていて。いつからなのかは分からないんだけど。(引退した)11月場所の前から手術する話はあったんです。力士を続けていく上で、もっと力を出せるように。鼻の骨を真っすぐにして、酸素を取り入れやすくなれば(ケガや疲労の)回復が変わるんじゃないかと。結局、引退することになったんだけど…。

 ――感想は

 秀ノ山 ムチャクチャしんどかった(苦笑い)。4日間ぐらい寝られなかったですもん。痛みで? いや、両方の鼻にガーゼを詰められて呼吸ができない。口呼吸のみ。飯を食っていても寝ていても鼻から息が抜けない。ずっと耳がキーンって鳴っている状態だった。

 ――昨年12月末に年寄総会があった。現役を引退した親方は、そこでスーツ姿をお披露目する

 秀ノ山 そう。スーツを着て行ったけど、自分の太ももがでかすぎて。座った瞬間に、ズボンの横がビリッと破けた(笑い)。せっかくフルオーダーで作ったのに…。

 ――力士サイズのフルオーダーなら、ウン十万円もしたのでは

 秀ノ山(現役時代は)今まで着物でも浴衣でも足元を締め付けられることがなくて。「こんなもんやな」と思って作ったら全然、サイズが合っていなかったという。

 ――スーツデビューが“黒星”だったとは…。一方、部屋では弟弟子への指導を始めている

 秀ノ山 この前、手計(幕内琴勝峰)と相撲を取った。相撲を取るのは11月場所以来かな。

 ――当面はまわしを締めて指導を続ける

 秀ノ山 口で言うだけなのもね。今は胸を出したりとか、肌と肌を合わせて相撲の厳しさを教えてあげるのが一番かと。

 ――指導者としての今後の抱負は

 秀ノ山 横綱や関取も育てたいけど、それって本当にごく一部。強い子とか弱い子とか番付に関係なく、相撲は勝ち負けよりも過程が大事だと思うんですよ。ケガとかで壁にぶち当たる子に、壁の先を見せてあげたいな。できない子も人間的に一人前にしたい。強くなることも大事だけど、そっちの方がもっと大事だと思う。素直な子もいれば、我が強い子もいて大変だけど(笑い)。

 ――今は新型コロナウイルスで大変な状況だ

 秀ノ山 そういう中で頑張っているのは(現役の)力士だから。力士がめいらないように、しっかりサポートしていけたら。

 ――家族と過ごす時間も増えたのでは。長男の弘人くん(3歳)の様子などは

 秀ノ山 毎日、家で相撲を取らされる。ハハハ。2時間とか3時間、普通にやるから。ひと通り全部、一人でできるようになったんですよ。横綱土俵入り、幕内土俵入り、最後の弓取り式…初っ切りや相撲甚句もできる。自分で教えた? いや、ユーチューブとかでよく見ているんですよ。

 ――引退会見では本人が望めば力士にしたいと言っていた。わんぱく相撲でデビューさせるか

 秀ノ山 うん、出させたいね!

 ――今度、新しく家族が増えるそうですが

 秀ノ山 2月に男の子が生まれる。うれしいね。またにぎやかになるから。

 ――次も男の子なら子供同士で相撲が取れる

 秀ノ山 そうそう。それが一番、助かる(笑い)。

 ☆ひでのやま・かずひろ 本名・菊次一弘。1984年1月30日生まれ。福岡・柳川市出身。2002年初場所で初土俵を踏み、05年初場所で新入幕。11年秋場所後に大関に昇進し、16年初場所では日本出身力士として10年ぶりの優勝を果たした。幕内勝利数718勝は「昭和の大横綱」の大鵬に次ぐ歴代6位。幕内出場回数1332回(同6位)、幕内在位92場所(同7位)。三賞は殊勲賞3回、技能賞4回、金星は3個。家族は祐未夫人と長男の弘人くん。181センチ、178キロ。