初場所4日目(15日、東京・両国国技館)、幕内遠藤(23=追手風)が幕内宝富士(26=伊勢ヶ浜)を下手投げで破り、3連勝。土俵際での逆転勝ちに「(相撲内容は)あまり良くなかったけど、相手が崩れたので“ここしかない”と思った。ラッキーです」と話し、してやったりの表情だ。

 この日の取組前には永谷園のテレビCMに出演することが発表された。入門から1年に満たない力士がCMに抜てきされるのは、異例のことだ。昨年春場所に幕下付出10枚目格でデビューすると、史上最速となる所要3場所で新入幕。甘いマスクも相まって、瞬く間に人気力士となった。昨年末はテレビのバラエティー番組に相次いで出演。年明けの1月4日にはトークショーに参加するなど大忙しだ。

 まさに“遠藤の大売り出し”とも言える状況の背景には、日本相撲協会の思惑も見え隠れする。八百長問題などの不祥事の影響で昨年度まで3年連続の赤字。観客増による黒字転換を目指す一環として、力士のメディアへの露出を推進している。横綱白鵬(28=宮城野)や大関稀勢の里(27=田子ノ浦)ら看板力士がいるとはいえ「目新しさ」という点で遠藤はうってつけの存在だ。

 一方で「番付社会」の角界内では、三役はおろか幕内上位の経験すらない力士の過度の露出に“時期尚早”との見方もある。ベテラン親方の一人は「以前なら考えられないこと。土俵で結果を出せなければ『何をやっているんだ』と言われるよ」と首をかしげた。

 もちろん、遠藤自身も置かれた状況は理解しているはず。何としても結果を残したいところだが…。