カド番の大関琴奨菊(29=佐渡ヶ嶽)が関脇に陥落のピンチだ。大相撲初場所3日目(14日、東京・両国国技館)、幕内豊ノ島(30=時津風)の切り返しに屈して土。1勝2敗と黒星が先行し「ダメだね。今場所にかける気持ちでやってきたんだから、頑張らないと」と険しい表情を浮かべた。

 仮に大関残留に失敗すれば、わずか1年あまりの間に3大関が消える“異常事態”となる。元大関の把瑠都は昨年初場所に関脇へ陥落。琴欧洲(30=佐渡ヶ嶽)は今場所から関脇へ降格した。3人に共通するのは「故障」で窮地に陥ったこと。琴奨菊も昨年九州場所で右大胸筋断裂の大ケガを負い、万全ではない状態で今場所に臨んでいる。

 現行制度では、負傷による休場で地位が保障されるのは横綱だけ。2011年の八百長問題発覚を契機に当時の新生委員会が「公傷制度」の復活を提言したものの、導入されることなく現在に至っている。いくら技術や体力に秀でていても、大ケガをすれば容赦なく番付が落ちるシステムは、現役力士の間からも「厳しすぎる」との声が上がる。

 把瑠都は左ヒザのケガで幕下への陥落が確実となった昨年秋場所前に引退。横綱白鵬(28=宮城野)をして「いずれ横綱になる」と言わしめた男は、28歳の若さで土俵を去った。角界関係者は「師匠の尾上親方(43=元小結浜ノ嶋)は幕下に落ちても現役を続けさせるつもりだった。『ケガさえ治れば』との思いがあったのだろう。本人の意思が固くて引退した」と舞台裏を明かす。

 長い目で強い力士を育てるのか、故障をした時点で「失格」なのか。角界内でも議論が分かれそうだ。