【相撲】新大関正代を急成長させた白鵬&鶴竜の〝技の実験台〟扱い

2020年09月30日 11時15分

ぶつかり稽古で正代㊧胸を出す白鵬

 日本相撲協会は30日午前、東京・両国国技館で大相撲11月場所(11月8日初日、国技館)の番付編成会議と臨時理事会を開き、関脇正代(28=本名・正代直也、時津風)の大関昇進を正式に決定。相撲協会からの使者が東京・墨田区の時津風部屋で正代と師匠代理の枝川親方(50=元幕内蒼樹山)に大関昇進を伝えた。これまでの不運や“屈辱経験”を乗り越えて、ついに看板力士に上り詰めた。

「大関正代」が正式に誕生した。熊本県出身の大関は1962年夏場所後の栃光以来58年ぶり。“角聖”双葉山が創設した名門・時津風部屋では63年初場所後の豊山以来4人目となる。馬力を生かして前へ出る相撲は迫力満点。白鵬(35=宮城野)と鶴竜(35=陸奥)の両横綱が休みがちなだけに、新たな看板力士に対する期待は大きい。

 東農大2年時に学生横綱に輝いた大器。2014年春場所で初土俵を踏み、歴代2位タイの所要17場所(年6場所制以降、幕下付け出しを除く)で新関脇まで駆け上がった。ただ、ここまでの歩みは決して順風満帆だったわけではない。最初の“壁”にぶつかったのは関取が目前の時期。15年春場所は幕下3枚目で4勝3敗と勝ち越したが、番付は幕下2枚目どまり。翌場所も4勝3敗で勝ち越しながら、今度は幕下筆頭で留め置かれた。

 あまりの番付運の悪さに意気消沈。正代は「なかなか(十両に)上がれなくて心が折れそうになった。あの時が一番つらかったですね。筆頭で5番勝ってやっと上がった」と当時を振り返っている。新関脇以降も足踏みが続いた。幕内上位でなかなか勝ち越せず、昨年秋場所では3勝12敗と大敗。支度部屋で悔し涙を流した。

 この1年の急成長の土台となったのが、横綱や大関にもまれた経験だ。出稽古や巡業先の稽古では白鵬や鶴竜らに毎回のように稽古相手に指名され、数えきれないほど土俵に転がされた。技の“実験台”のような扱われ方までされたこともある。それでも正代は「指名されるだけでありがたいこと。一度も胸を借りることなく引退していく力士もいる」。指名を一度も拒否せずに胸を借り続けた。

 新型コロナウイルス禍で5月の夏場所が中止となった時期も有効に使った。接触を伴う稽古が制限される中、地道な筋力トレーニングで下半身を強化。立ち合いで踏み込む圧力が増し、秋場所の初優勝と大関をたぐり寄せる大きな武器となった。正代は「課題はまだまだある。止まってしまった後の出足とか。今まで以上に稽古に励みたい」とさらなる成長に意欲を見せた。

 もちろん、今回の大関昇進が最終的なゴールではない。正代が「相撲界では神様みたいな地位」と話す横綱への挑戦が、ここから始まる。