【相撲】正代の大関昇進の原動力は〝マイナス思考〟 熊本農高の恩師が語る初優勝秘話

2020年09月29日 11時00分

高校時代からネガティブキャラは変わっていないという正代

 新たな看板力士の素顔とは――。大相撲秋場所で初優勝を果たした関脇正代(28=時津風)が、まもなく大関に昇進する。これまでネガティブな性格の持ち主として知られてきたが、高校時代の恩師は正代の“マイナス思考”こそが成長の原点になっていると指摘。自らの弱さを知るがゆえに人一倍努力を重ねてきた結果が、悲願達成につながったという。

正代は初優勝を果たした秋場所千秋楽(27日)から一夜明け、東京・墨田区の時津風部屋からオンラインで会見。「緊張感から解放された。(出身の)熊本県で初めての優勝者。とても光栄」と改めて喜びをかみしめた。30日に開かれる11月場所(11月8日初日、東京・両国国技館)の番付編成会議と臨時理事会の承認を経て正式に「大関正代」が誕生する。

 本名のしこ名「正代」ついては「変えるつもりはないです。珍しい名字だと思うし、皆さんの中で定着している。これからも、ずっと『正代』でいけたら」と明言。輪島、北尾、出島、高安に続く5人目の本名大関として土俵に上がる構えだ。今後は横綱候補としての期待も背負うことになるが「まずは大関で活躍することが先」と地に足をつけている。

 決して大風呂敷を広げないどころか、しばしば口にする弱気な発言でネガティブなキャラとして知られるようになった。この1年の活躍が自信となり、後ろ向きな言葉は減りつつあるものの、正代本人は「そんなに性格は変わっていない」と自己分析する。そんな弱気な男の成長をつぶさに見てきたのが、熊本農高で正代を指導した伊藤辰博氏(48)だ。

 伊藤氏は東農大で学生横綱に輝いた実績を持ち、後に同じ東農大で学生横綱となった正代にプロ入りを勧めた人物の一人。その恩師は高校時代の正代について「部員には優しく、自分には厳しく稽古をしていましたね。もともと、自分が一番強いと思っていない。だから自分は努力しないといけないということで稽古していたんだと思います」と振り返る。正代は自ら進んで他の部員の倍以上の稽古をこなし、メキメキと力をつけていったという。

 伊藤氏は「ほとんどの部員は2年の後半あたりからようやく自分の相撲の取り方が見えてくるんですが、正代の場合は2年になったころにはもう見えていた。やらされるのではなく、自ら稽古に取り組んでいたことが大きかった」。その結果、2年時に出場した全国高校新人選手権で準優勝の成績を収めて頭角を現した。

 後ろ向きと受け取れる発言は、自らの力を過信せず、人一倍努力しようとする姿勢の裏返しでもあったのだ。看板力士となってからも、自らを過大評価する心配は無用と言えそうだ。