大相撲秋場所(東京・両国国技館)で悲願の初優勝を達成し、大関昇進を確実にした関脇正代(28=時津風)が一躍、時の人となった。熊本出身力士としても初の幕内優勝を果たし、地元の熊本・宇土市は祝福ムード一色。後援会はすでに記念品の製作を決めており、凱旋パレードの待望論が上がる。ただ、新型コロナウイルス禍は沈静化しておらず、〝新大関〟の帰省が実現するかどうかは不透明な状況。そこで地元では「リモート祝賀パレード」の仰天プランが浮上している。

 秋場所千秋楽(27日)で正代は幕内翔猿(28=追手風)を突き落としで下し、13勝2敗で初優勝を決めた。熊本出身力士として初となる賜杯を手にして「重かったです。千秋楽までもつれて自分の手でつかんだのは大きなことだと思う」と喜びをかみ締めた。

 東農大時代には学生横綱に輝いた大器が安定感を身につけ、ついに本格化した。これを受け、日本相撲協会の審判部は正代の大関昇進を決定。30日に開かれる臨時理事会の承認を経て、正式に「大関正代」が誕生する。

 地元も歴史的快挙に祝賀ムード一色だ。宇土市後援会は宇土市民体育館で「100人限定パブリックビューイング(PV)」を開催。V決定の瞬間は温かい拍手が湧き起こり、金田光生会長(68)も「良かったです。もう感無量ですよ」と喜びを爆発させた。今回の優勝に合わせて、正代の手形が入った陶器の皿を記念グッズとして100セット製作することが決まった。

 それだけではない。すでに地元では後援会や自治体などが連携し、正代の祝賀パレード実現に向けて動きだしているという。金田氏は「やるとなれば、帰ってきていただけると思うんですが」と郷土の英雄の帰還を心待ちにしている。

 ただし、パレードが実現するかどうかは現時点で不透明な部分もある。正代本人が新型コロナウイルスの感染予防の観点から、帰省を自粛しているからだ。秋場所前には「もしかしたら僕が地元にウイルスを持っていったりするかもしれない。家族のことが心配ですし、今年いっぱいは東京にこもろうかな」と話している。また、正代自身が帰省に前向きになったとしても、パレードの参加には相撲協会の許可が必要となる。クリアすべき条件は少なくない。

 もちろん、地元サイドも簡単にあきらめるつもりはない。地元関係者は「もし正代関の帰省が難しければ、リモートでもいい。テレビ電話かオンラインでつないだ大画面テレビのようなモニターを付けて町の中を走らせたりするとかね」と〝プランB〟の秘策を明かした。リモート会見ならぬ「リモート祝賀パレード」であれば、感染のリスクもゼロだ。

 荷台にモニターを据えたトラックが町内を周回し、画面の向こう側から正代が手を振りながら優勝を報告する…。そんな光景が、現実のものとなるかもしれない。

 いずれにせよ、正代を応援し続けてきた地元の喜びが最高潮に達していることは確か。正代は「たくさんの方に応援していただいている。少しでも恩返しになったのでは」。優勝と大関取りの同時達成は最高の恩返しとなったに違いない。