日本相撲協会は力士ら協会員に実施した新型コロナウイルスの抗体検査の結果を公表した。複数の感染者が発生した高田川部屋を除く44部屋に所属する協会員891人のうち、抗体陽性者は5人(陽性率0・56%)。その5人もPCR検査などで陰性、または治癒していると判断された。

 とはいえ、政府が一般の住民を対象に6月に実施した抗体検査では東京が0・10%、大阪が0・17%、宮城が0・03%。今回の結果はそれよりも高い数字となったが、どう判断すればいいのか。

 感染症に詳しい、医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広氏は「(0・56%は)予想より低いです。相撲は(稽古などで)閉鎖した空間で声を出しますよね。ウイルスは唾液中に含まれており、声を出すことで感染するリスクが高まります。そういう意味で相撲はハイリスク。1~2%くらいになると思っていたので」と“予想外”の結果だと分析した。

 かねて大相撲に対しては濃厚接触のリスクが指摘される一方で、相撲協会はぶつかり稽古など接触を伴う稽古の自粛を要請(現在は解除)。今でも出稽古や不要不急の外出を控えるように通達している。上氏は「相撲については多くの人が関心を持っていたと思うのですが、外部との接触が少なかったのか、よく管理したんだと思いますよ」と角界の取り組みを評価した。

 ただ、今回の検査結果だけで、完全に安全が確保されたわけではない。上氏は「これからはPCR検査を導入して、陽性者には順次(場所から)外れてもらう形を取るのがいいかもしれません。リアルタイムで管理していくことで感染拡大のリスクを抑えられると思います」と提言した。

 相撲協会は7月場所(19日初日、東京・両国国技館)の無観客開催を目指しており、13日の理事会で正式決定する見通し。八角理事長(57=元横綱北勝海)は「全員の陰性が確認できたことは意義がありました。協会員の健康管理・感染防止を徹底する所存です」とコメントした。3月の春場所に続き、今回も感染者ゼロで乗り切れるか。