稀勢V宣言に「待った」

2012年06月29日 12時00分

 大相撲名古屋場所(7月8日初日、愛知県体育館)へ向け、大関稀勢の里(25=鳴戸)が放った強気のV宣言が思わぬ波紋を呼んでいる。夏場所では一時トップを独走しながら終盤に失速し、悲願の初賜杯を目前で逃した。このため、稀勢の里は「今度こそ優勝できるように頑張る」とこれまでの控えめな発言から態度を一変させた。ところが、この和製大関の〝変心〟に意外なところから「待った」の声がかかったのだ。

 

 稀勢の里は夏場所で一時は2差の独走でトップに立ちながら、終盤に急失速。千秋楽の本割にも敗れ、初賜杯を目前で逃した。V逸の原因について「緊張もそれほどしなかったし、少し気持ちの緩みもあった。優勝の意識が少なかった。もっと意識してやれば、相撲も必死さが出たと思う。自分にプレッシャーをかけていかないといけない」と自己分析する。続けて「今場所こそは優勝できるように頑張りたい」とキッパリ言い切った。

 

 これまでの稀勢の里は「一番一番に集中する」などとひたすら控えめな発言に終始。ここまで強く決意を口にするのは異例といっていい。本人の言葉通り、あえて自身に重圧をかける意図も見てとれる。一方で、この“変心”を危惧する人物がいる。2006年初場所で日本人力士として最後の優勝を飾った玉ノ井親方(35=元大関栃東)だ。

 

 先場所の稀勢の里について「11日目から相撲が全然変わっちゃった。明らかに緊張していたね。優勝のことを考えたら絶対にダメになる」と指摘。失速の原因は「気持ちの緩み」ではなく、優勝が近づき本人も気付かないほど緊張していたとの見立てだ。その上で自身が初優勝した02年の初場所を引き合いに出した。

 

 11日目まで全勝で単独トップの栃東は12日目、13日目に連敗。代わって1敗の千代大海がトップに立った。ここから栃東は14日目、千秋楽で連勝。2敗で並んだ千代大海との優勝決定戦を制して初賜杯を手にした。玉ノ井親方は「とにかく、その日の一番だけを考えていた。14日目は『今日、自分が負けたら千代大海が優勝する。絶対に優勝させない』。千秋楽は『勝っても負けても今日で15日間が終わる』としか考えていなかった」と当時を振り返った。

 

 あえて強く優勝を意識する姿勢は、全くの逆ベクトルというわけだが…。果たして稀勢の里の〝意識改革〟は吉と出るか、凶と出るか。