「大関朝乃山」がついに誕生だ。日本相撲協会は朝乃山(26=高砂)の大関昇進を正式に決定。伝達式(25日)では使者の出羽海理事(52=元幕内小城ノ花)、千田川審判委員(45=元小結闘牙)の前で「大関の名に恥じぬよう相撲を愛し、力士として正義を全うし、一生懸命努力します」と口上を述べた。新たな看板力士として期待を背負う“堅実大関”の素顔とは――。

 晴れて看板力士となった朝乃山は伝達式の口上について「高校(富山商高)の校訓を入れたくて『愛』と『正義』を分けて言いました。次に中学校から使っている『一生懸命』を入れました。何事にも一生懸命に取り組むことを決意して決めました」と説明。新大関として臨む夏場所(5月10日初日、東京・両国国技館)へ向けて「優勝争いに加われるようにしたい」と早くも意気込んだ。

 大関昇進に伴い、今後は待遇面もアップする。番付の頂点の横綱は月給300万円。大関はそれに次ぐ250万円で、関脇・小結(180万円)からは70万円、平幕(140万円)からは110万円も月収が増える。東京場所では国技館の地下駐車場に自家用車で乗り入れることができるほか、移動には新幹線はグリーン車、飛行機はファーストクラスが使用できる。

 ただ、朝乃山の生活が大関昇進を機に一気に派手になることはなさそうだ。本紙も報じてきたが、かねて「結婚するまではお金をためます」と公言し、無駄な出費をしない堅実派。入ってくる金額よりも出ていく金額のほうが気になるタイプで、昨年5月の夏場所で平幕優勝を果たして優勝賞金1000万円を手にした際には「貯金します」と話す一方で「税金(の金額)が怖い…」と真顔で心配していたほどだ。

 昨年で最も大きな買い物は約20万円のブランド物バッグ。年収を考えれば、むしろ安すぎる印象だ。関取衆にとってはステータスの象徴でもある高級腕時計の購入も自重。部屋付きの若松親方(50=元幕内朝乃若)からの「時計なんか買っていたら貯金ができない」との助言を忠実に守っている。朝乃山は「最近は物欲がない。お金が減らないのはいいこと」とまで言い切る。

 だからといって「ケチな倹約家」というわけではない。部屋の若い衆を食事に連れていく際には、もちろん全額自腹。年間で数百万円を費やしているという。朝乃山は「若い衆をおいしいご飯に連れていくことも関取の役目。場所中とかに(付け人として)自分の仕事をしてもらっているので。それで頑張ってくれるなら僕もうれしい。“ありがとう”の思いを込めておごっていますね」。

 自分が価値を見いだせると感じたものには、出費を惜しまないということだ。伝達式には故郷の富山から両親も駆けつけ、愛息の晴れ姿を見守った。母の佳美さんは朝乃山の“嫁取り”について「全く話は聞いていません。まずは相撲ですよね」。まだしばらくは、朝乃山の貯金額は増え続けることになりそうだ。

 ◆スポーツ歴 小学校時代は相撲とハンドボール。ゴールキーパーで富山県の強化選手にも選ばれたが、中学の部活動ではランニングについていけずに断念した。

 ◆趣味 映画、スポーツ動画などの観賞。「映画は基本的にアクション映画しか見ない」。サッカーのメッシやC・ロナウドらのスーパープレー集など。

 ◆好物1 肉。「学生(近大)の時は食べ放題の焼き肉に行っていたので。プロに入ってから食べ放題じゃない肉を食べられてうれしかった」。ステーキはレアが好み。

 ◆好物2 魚。「九州のアラ(クエ)もうまいけど、富山のブリには勝てない。ブリのほうが脂があって好き」

 ◆女性のタイプ タレントの磯山さやか。

 ◆ライバル 同じ富山県出身のスポーツ選手にライバル心。中でもNBAワシントン・ウィザーズの八村塁(22)と柔道男子90キロ級の向翔一郎(24=ALSOK)には「自分より年下だし、負けられない」。

 ◆大失敗 昨年春場所中に食べたカキにあたって体調を崩す。好調から一転大失速した。それ以降は体調管理に細心の注意を払う。本場所中の禁酒もその一つ。「最悪のカキだったけど、いい意味のカキでもある。それで勉強になったので」

 ◆自称晴れ男!?「僕は晴れ男。富山で(優勝)パレードをやった時も1時間だけ晴れて、終わったら雨が降ってきた」