【大相撲】無観客の春場所は穴だらけ 力士、親方、行司感染の時どうする

2020年03月02日 16時40分

会場の大阪府立体育会館は、土俵が作られる最中だったが…

 本当に大丈夫なのか…。日本相撲協会は大相撲春場所(8日初日、大阪府立体育会館)を無観客で開催することを正式に決めた。新型コロナウイルスの感染拡大を防止するための措置で、完全無観客での本場所実施は史上初の異常事態となる。春場所中に力士に感染者が出た場合は途中で打ち切る方針だが、その場合の優勝力士や成績の扱い、番付編成の方法などは未確定。それ以外にも問題が山積し、埋めなければならない“穴”だらけで、大混乱は避けられない情勢だ。

 日本相撲協会の八角理事長(56=元横綱北勝海)は「(感染リスクの観点から)お客さまに迷惑はかけられない」と通常開催を断念した理由を説明。「中止」ではなく「無観客」としたことについては「楽しみにしてくれているファンのために、ぜひ開催したい」と話した。NHKの大相撲中継は通常通りに放送されることから「テレビの前で相撲観戦をお楽しみいただきたい」と呼びかけた。

 すでに完売している前売り券の払い戻し方法は後日、協会のホームページなどで告知する予定。通常開催の断念で、協会が被る損失は10億円以上とみられる。現時点では、幕内の取組が対象の懸賞をはじめ、土俵入り、初日と千秋楽の協会あいさつ、物言いがついた場合の審判長による場内説明などは基本的に通常通りに行われる予定だ。

 感染対策も検討されている。力士同士の力水は「形だけにする。口をつけない」(八角理事長)。幕内優勝力士には天皇賜杯と優勝旗が授与されるが、その他の表彰やVパレードは中止となる方向だ。報道陣は支度部屋で取材できず、別に「ミックスゾーン」が設けられる。ただ、過去に前例がない事態だけに、運営方法の細部までは詰め切れていないのが現状だ。

 相撲協会は力士に感染者が出た場合は春場所途中でも中止にする方針。親方衆、行司、呼び出し、床山など力士以外の協会員が感染した場合について、芝田山広報部長(57=元横綱大乃国)は「その時の状況を見て対処していくしかない。ケース・バイ・ケース」としている。何より、春場所を途中で打ち切った場合の優勝力士、成績の扱い、番付編成については未確定のままだ。

 打ち切りの段階でV争いのトップが複数いた場合は、優勝者は誰になるのか。関脇朝乃山(26=高砂)が大関取りの目安の12勝に王手をかけた段階だったら、大関昇進の可否はどうなるのか。一人大関の貴景勝(23=千賀ノ浦)が打ち切りの時点で負け越していたら、翌場所はカド番になるのか…。事前に確たるルールを決めておかなければ、大混乱に陥ることは必至だ。

 それ以外にも、感染予防の観点から埋めなければいけない“穴”は多い。力士は春場所中に電車など公共交通機関は利用せず、車やバスを手配して場所入りする予定だが、詳細については決まっていない。力士の体温検査(37・5度以下)も会場入場時ではなく、各部屋での実施に委ねられている。

 さらには報道陣に対しても、部屋での力士への稽古取材の自粛を要請したが…多くの部屋が一般のファン見学を禁じている一方で、後援者の見学はフリーで稽古場に招き入れているのが現状だ。協会としても各部屋に一任し、規制しない方針だという。報道陣より後援者の人数のほうがはるかに多いケースもあるだけに、これでは効果そのものに疑問符が付く。

 八角理事長は「まだいろんなことが決まっていない。この1週間で考えたい」と話したが…。無観客開催の決断を下したものの、「見切り発車」の感は否めない。本場所中はいったいどうなるのか。前代未聞のドタバタが避けられそうにない状況だ。