日本相撲協会は9日の臨時理事会で宮城野部屋の幕内石浦(30)と幕下宝香鵬(30)の暴力行為について処分を決定したが、角界のジレンマが改めて浮き彫りになった。

 石浦は4日の稽古中に宝香鵬からダメ押しをされたことに立腹し、ヒザ蹴りや拳で殴りかかるなどの行為をした。宝香鵬も平手や拳で殴りかかって応酬。横綱白鵬(34)が割って入ってやめさせた。理事会では、稽古中に突発的に起きた点や両力士にケガがないことなどから常習性や悪質性はないと判断。石浦に報酬減額(20%、1か月)とけん責、宝香鵬にけん責の懲戒処分を下した。師匠の宮城野親方(62=元幕内竹葉山)は現場に居合わせながら暴力を防げなかったことや、過去に監督責任を問われて処分歴があることを理由に報酬減額(20%、3か月)となった。

 相撲協会は元横綱日馬富士(35)らの暴力問題を受けて、一昨年12月に「暴力禁止規定」と「力士の暴力に対する処分基準」を定めた。土俵外の暴力は論外として、稽古中も握り拳で殴るなど相撲の禁じ手にあたる行為も禁止している。番付が高くなるほど処分は重くなり、十両以上の関取の場合は「出場停止1場所」を目安としている。

 その基準に照らせば、今回の石浦は軽い処分にとどまった格好。芝田山広報部長(57=元横綱大乃国)は「(処分を)あまり厳しくしてしまうと、力士たちが萎縮してしまう。心を熱くして激しい稽古をすれば、本場所でいい相撲が取れる。お客さんにも喜んでもらえる」と“減刑”の経緯を説明した。

 実際、親方衆の間では「稽古中のことだから仕方がない」と処分された両力士を擁護する声は少なくない。相撲は闘志と激しさが求められる格闘技。それだけに、これまで稽古場での多少の“行き過ぎ”は師匠からの注意で済まされてきたことは確かだ。

 一方、ネット上などでは解雇などの厳罰を求める意見も多く見られた。時代の流れとはいえ角界と世間の「温度差」は簡単に埋まりそうにない。