大相撲の阿武松親方(58=元関脇益荒雄)が日本相撲協会を退職することになった。現役時代は1987年春場所で千代の富士ら2横綱4大関を撃破。角界に「益荒雄旋風」を起こし「白いウルフ」の異名で人気を集めた。現在は阿武松部屋の師匠で、協会理事も務めている。今後は音羽山親方(37=元幕内大道)が部屋を継承する予定で、26日の理事会で承認を協議する見通しだ。

 主な退職理由は高血圧などの体調不良とされるが、いったい何があったのか。退職理由との直接的な因果関係は不明なものの「心労が重なって精神的に不安定になっていたようだ」(角界関係者)との情報もある。

 阿武松親方は2010年の協会理事選挙で強行出馬した元貴乃花親方(47=花田光司氏)と行動をともにし、二所ノ関一門を離脱した。いわゆる「貴の乱」だ。その後に貴乃花派は分裂。昨年の理事選では阿武松親方が当選し、貴乃花親方は落選している。同年秋場所後には、阿武松親方をはじめとする旧貴乃花派の親方衆の大半が二所一門に合流。孤立した貴乃花親方は協会を退職することになった。阿武松親方は協会に残留するように説得を試みたが、貴乃花親方は逆に「圧力」と受け止めるなど両者の溝は埋まらなかった。

 一方で、阿武松親方も古巣の二所一門からすんなりと合流を認められたわけではなかった。以前に一門へ反旗を翻して離脱した経緯から、一部の親方衆が猛反発。合流後も阿武松親方と二所一門の一部親方との間で折り合いがつかなかったという。かつての盟友だった貴乃花親方を説得できず、復帰した二所一門でも居場所を見いだしづらい立場に置かれていた。

 いずれにせよ、貴乃花親方が退職した1年後に阿武松親方も角界を去ることになった。皮肉としか言いようがない。