大相撲秋場所10日目の17日、角界は元関脇逆鉾の井筒親方が前日16日に58歳で死去したことを受けて、慌ただしい動きを見せた。日本相撲協会は午前に緊急理事会を開き、師匠不在となった井筒部屋の力士は鏡山部屋の一時預かりとすることを承認した。鏡山親方(61=元関脇多賀竜)は井筒部屋が所属する時津風一門の代表で協会理事を務めている。

 あくまでも正式な移籍先が決まるまでの暫定的な措置。横綱鶴竜(34)ら3人の力士の新たな所属部屋は秋場所後に決定する。そんな中、新天地の最有力候補として急浮上しているのが、同じ一門の時津風部屋だ。鶴竜は本場所前には時津風部屋への出稽古で調整するのが恒例。師匠の時津風親方(45=元幕内時津海)をはじめ、幕内正代(27)ら所属力士とも良好な関係を築いており、移籍に支障はない。また幕内遠藤(28)が所属する同門の追手風部屋も候補に挙がっているという。

 一方、当初は“本命”と見られた錣山部屋への移籍には暗雲が漂っている。師匠の錣山親方(56=元関脇寺尾)は井筒親方の実弟。16日夜には3兄弟の長兄(元十両鶴嶺山)とともに都内の病院で最後をみとるなど、深い絆で結ばれている。井筒親方の生前には井筒部屋と錣山部屋が合併を模索した時期もあった。

 しかし、錣山部屋が時津風一門を離脱して二所ノ関一門へ加入したことが大きな“障害”となっている(本紙昨報)。角界では部屋間の移籍は同じ一門内で行われるのが通例。二所一門の親方の一人は「うちの一門では受け入れられない。錣山部屋が“どうしても”と言うなら、一門から出て行ってもらうしかない」と拒絶反応を示した。

 この日、井筒親方の通夜は秋場所後の24日、告別式は25日に東京・墨田区の部屋で時津風一門葬として行われることが発表された。鶴竜ら井筒部屋の力士たちは、移籍問題を含めてしばらくは落ち着かない日々が続くことになりそうだ。