大相撲秋場所2日目(9日、東京・両国国技館)、3場所ぶり43回目の優勝を目指していた横綱白鵬(34=宮城野)が右手小指の骨折のため休場した。3日には念願の日本国籍を取得したばかりだが、「日本人初V」は来場所以降に持ち越しとなった。一方で、現役引退後に日本相撲協会から「一代年寄」が授与されるかどうかは、現時点で不透明のまま。大横綱が角界で4人目の称号を得るための条件とは――。

 この日、白鵬は日本相撲協会に「右第5中手骨骨折、約2週間の加療を要する見込み」との診断書を提出。途中休場では自己最速となる2日目でリタイアすることが決まった。白鵬は今月1日に行われた伊勢ヶ浜一門の連合稽古で右手小指を負傷。通常であれば出稽古で調整する時期にもかかわらず、2日以降は関取衆と相撲を取る稽古を控えていた。

 初日(8日)の取組後に痛みが悪化したため、この日の朝に都内の病院で検査を受けたところ骨折が判明。師匠の宮城野親方(62=元幕内竹葉山)は「(1日に負傷した時点で)痛みはあったけど“これぐらいなら大丈夫”と思っていたようだ。検査を受けたら折れていた」と説明した。

 モンゴル出身の白鵬にとって、今回は節目となる場所でもあった。3日に念願の日本国籍を取得したばかりだからだ。これで、かねて希望していた現役引退後に親方になるための条件をクリアした。今後は相撲協会から「一代年寄」を授与されるかどうかが焦点の一つ。過去に授与されたのは大鵬、北の湖、貴乃花の3人(千代の富士は辞退)。優勝20回以上が一つの目安とされ、42回の優勝を誇る白鵬は実績面では申し分ない。

 ただ、相撲協会に「一代年寄」に関する規定はなく、優勝回数で自動的に授与されるものでもない。あくまでも理事会が判断して決めることだ。白鵬は一昨年の元横綱日馬富士(35)による暴行問題(現場に同席)で「報酬減額」、今年3月場所の優勝インタビューでの三本締めで「けん責」の懲戒処分を受けている。実績面で角界への貢献度は多大な半面、協会幹部の心証が悪い方に傾いていることも確かだ。

 それだけに、残りの現役生活の間に大きな問題行動があれば、授与を見送られる可能性もゼロとは言い切れない。すべては今後の行動次第ということだ。相撲協会の芝田山広報部長(56=元横綱大乃国)もすでに、親方になる希望を持つ白鵬に対して「その気持ちがあるのなら、協会のルールにのっとって、自分の立場をわきまえて言動に注意しながら務めを果たしてほしい」と注文をつけている。

 晴れて「日本人」となって迎えた今場所は、改めて横綱としての品格と力量を兼ね備えていることを証明する場でもあったはずだが…。協会に好印象を残す機会も、来場所以降に持ち越しとなった格好だ。